共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しない。 (補足意見がある。)
将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものとされた事例
民訴法135条
判旨
共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき、その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち、事実審の口頭弁論終結日の翌日以降の分は、原則として将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しない。
問題の所在(論点)
共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益に関し、他の共有者が自己の持分割合に応じて請求する不当利得返還請求のうち、事実審の口頭弁論終結後の分について、将来の給付の訴えとしての適格が認められるか。
規範
将来の給付の訴え(民訴法135条)が認められるためには、対象となる請求権に「請求の適格」が認められなければならない。具体的には、①将来発生すべき債権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されること、②債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来の事情変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られること、③将来の事情変動の発生を請求異議の訴え等で証明すべき負担を債務者に課しても当事者間の衡平を害さないことが必要である。本件のような共有物の賃貸収益に基づく不当利得返還請求は、現実に収益が受領されて初めて権利が発生する性質のものであり、その発生が第三者の意思等に左右されるため、原則として上記適格を欠く。
重要事実
共有者の一人である上告人が、共有地(3筆の土地)を第三者に駐車場として賃貸し、賃料収益を得ていた。他の共有者である被上告人らは、上告人に対し、各々の持分割合に相当する賃料相当額の不当利得返還を請求した。原審は、事実審の口頭弁論終結日の翌日以降に発生すべき将来の不当利得金についても、その支払を命じる将来の給付の訴えを一部認容した。
事件番号: 平成21(受)1097 / 裁判年月日: 平成22年12月16日 / 結論: その他
不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは許されない。
あてはめ
本件における不当利得返還請求権は、上告人が第三者から賃料を現実に受領して初めて発生するものである。駐車場の賃貸借においては、賃借人の意思による解約や更新拒絶、あるいは近隣の競合状況による賃料変動の可能性が常に存在し、将来にわたって約定の賃料が確実に支払われ続けるという蓋然性は必ずしも高くない。したがって、将来の債権発生の基礎となる事実関係が確実なものとして継続すると予測することは困難であり、また、将来の不発生や減額の立証責任を債務者(上告人)に一方的に課すことは、当事者間の衡平を害する。ゆえに、本件の請求は将来の給付の訴えとしての適格を欠くといえる。
結論
本件将来請求部分は不適法であり、却下を免れない。したがって、当該部分を認容した原判決は破棄される。
実務上の射程
本判決は駐車場賃料の事例であるが、補足意見によれば、居住用家屋の賃料や建物の敷地の地代など、将来にわたり発生の蓋然性が極めて高いものについては、個別の具体的事情により適格が認められる余地を残している。答案作成上は、不当利得の発生が「第三者の意思」や「現実の受領」に依存する点を重視し、原則として適格を否定する論理として活用すべきである。
事件番号: 昭和41(オ)1277 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
他の共有者に対してなされた共有持分の放棄の意思表示が、右共有者との通謀による虚偽のものであるときは、右意思表示については、民法第九四条が類推適用される。
事件番号: 昭和26(オ)113 / 裁判年月日: 昭和27年5月2日 / 結論: 破棄差戻
調停により取得した不動産の二分の一の共有持分権に基く分割請求権があることを原因として提起した共有物分割請求訴訟において、その請求を棄却した確定判決の既判力は、判決の理由において、共有権の存否につき判断をしている場合であつても、右の調停により共有持分権を取得したかどうかの点までは及ばない。
事件番号: 昭和56(オ)817 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: その他
共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。
事件番号: 平成15(受)670 / 裁判年月日: 平成16年4月20日 / 結論: その他
共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。