共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。
相続財産である可分債権につき共同相続人の1人がその相続分を超えて債権を行使した場合に他の共同相続人が不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることの可否
民法427条,民法898条,民法899条,民法907条
判旨
遺産分割前の共同相続不動産について単独名義の登記がある場合、他の相続人は共有持分権に基づき登記手続を請求でき、また、相続により当然分割された可分債権を他の相続人が無権限で行使した場合は、不当利得返還請求等が可能である。
問題の所在(論点)
遺産分割が未了の状態において、共同相続人の一人が、法定相続分に基づく不動産の持分権移転登記手続や、当然分割された可分債権(預貯金)の不当利得返還を民事訴訟で請求できるか。これらの請求が「遺産分割審判」という家事事件の範疇として却下されるべきかが問われた。
規範
1. 相続開始後、遺産分割までの間の共同相続不動産は共同相続人の共有に属し、各相続人は自己の持分権に基づき、単独所有名義の登記を有する者に対し登記手続を請求できる。 2. 相続財産中の可分債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、各共同相続人の分割単独債権となる。したがって、共同相続人の一人が法律上の権限なく自己の相続分を超える債権を行使した場合には、他の共同相続人は不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。
重要事実
被相続人Dが死亡し、その子である上告人及び被上告人Bらを含む数名が共同相続人となった。Dの遺言には、Bに全財産を相続させる旨の昭和57年遺言と、Eに全財産を相続させる旨の平成4年遺言(EはDより先に死亡)等があった。Bは、本件各不動産について単独所有の登記名義を有し、かつ本件貯金を解約・払戻しを受けた。上告人は、昭和57年遺言は平成4年遺言により取り消されたと主張し、自己の法定相続分に基づき、Bに対して不動産の持分移転登記及び払戻金の不当利得返還を求めた。
事件番号: 昭和45(オ)398 / 裁判年月日: 昭和46年1月26日 / 結論: 棄却
相続財産中の不動産につき、遺産分割により権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分をこえる権利の取得を対抗することができない。
あてはめ
不動産については、遺産分割までは共有関係に立つため、共有持分を侵害しているB(単独名義人)に対し、上告人は保存行為ないし妨害排除請求として自己の持分を主張できる。また、預貯金(可分債権)については、相続開始と同時に各相続人に分断されるため、Bがこれを受領したことは、上告人が取得した単独債権の侵害にあたる。したがって、上告人が民事上の権利行使として持分登記や不当利得返還を求めることは正当であり、これを家事審判事項であるとして却下した原審の判断は誤りである。
結論
共同相続人は、遺産分割を経ることなく、自己の法定相続分に基づき、他の相続人に対して共有持分権に基づく登記請求及び分割単独債権の侵害に基づく不当利得返還請求を行うことができる。
実務上の射程
遺産分割前の紛争において、家事審判を待たずに民事訴訟で解決可能な範囲(持分権の保全、当然分割債権の回収)を明確に示したもの。ただし、預貯金についてはその後の判例(最決平28.12.19)により「当然分割」の法理が変更され、現在は原則として遺産分割の対象(共有)とされる点に注意が必要。不動産の共有持分については依然として本判例の枠組みが妥当する。
事件番号: 平成10(オ)994 / 裁判年月日: 平成12年5月30日 / 結論: 破棄自判
遺贈の対象不動産についてされた共同相続登記を右登記後の遺留分減殺請求による持分の相続登記に更正することはできない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和38(オ)960 / 裁判年月日: 昭和41年2月17日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】訴訟代理人が上告取下および復代理人選任の特別授権を受けている場合、当該代理人から適法に復任された復代理人が行う上告取下げは、本人が直接復代理人に授権していなくとも有効である。 第1 事案の概要:上告人らは弁護士Eに対し、上告取下げおよび復代理人選任の特別授権を含む訴訟委任をしていた。Eは、相手方と…
事件番号: 平成7(オ)1203 / 裁判年月日: 平成12年1月27日 / 結論: その他
一 渉外的な法律関係において、ある法律問題(本問題)を解決するために不可欠の前提問題が国際私法上本問題とは別個の法律関係を構成している場合、その前提問題の準拠法は、法廷地である我が国の国際私法により定めるべきである。 二 渉外親子関係の成立の判断は、まず嫡出親子関係の成立についてその準拠法を適用し、嫡出親子関係が否定さ…
事件番号: 昭和36(オ)170 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が無権利者に対して有する妨害排除請求権としての登記抹消請求権等は、債権者代位権の目的とすることが可能である。不動産の真実の所有者は、架空の登記名義人に対し、所有権に基づき実体に合致するよう移転登記または抹消登記を求めることができる。 第1 事案の概要:債務者Dは国税を滞納していた。Dの所有財…