遺贈の対象不動産についてされた共同相続登記を右登記後の遺留分減殺請求による持分の相続登記に更正することはできない。 (補足意見がある。)
遺贈の対象不動産についてされた共同相続登記を遺留分減殺請求による持分の相続登記に更正することの可否
民法896条・民法898条・民法1028条・民法1031条 不動産登記法63条・不動産登記法66条
判旨
相続登記が経由された後に、受遺者との和解等により新たに持分を取得した相続人は、当該取得が遺留分減殺によるものか否かを問わず、更正登記によってその権利取得を反映させることはできない。
問題の所在(論点)
相続登記がなされた後に、受遺者との和解や遺留分減殺の名目で取得した持分について、相続登記の更正登記手続によって名義を変更することの可否。
規範
不動産登記の更正登記は、登記の完了後に生じた実体的な権利関係の変化を反映させるために用いることはできない。相続開始後に、法定相続分に基づく相続登記が既になされている場合、その後に受遺者との合意や遺留分減殺の結果として新たに取得した持分については、既存の相続登記を更正する方法ではなく、新たな権利移転を原因とする登記手続によるべきである。
重要事実
被相続人Dが全財産をEに遺贈したが、遺言執行者Fによる移転登記前に、法定相続人ら(被上告人B1、B2及び上告人ら)の名義で法定相続分に従った相続登記がなされた。その後、被上告人らはEに対し遺留分減殺請求訴訟を提起し、裁判上の和解によって本件土地の持分(B1が5分の4、B2が5分の1)を取得した。被上告人らは、上告人らに対し、既存の相続登記を上記和解内容に符合させるよう更正登記手続を求めた。
事件番号: 昭和33(オ)502 / 裁判年月日: 昭和35年7月19日 / 結論: 棄却
一 受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。 二 受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。
あてはめ
本件において被上告人らが取得した持分は、本来の遺留分減殺請求により取得すべき割合を超えており、また和解金の支払い等を伴うものであるから、純粋な減殺請求による取得とは認め難い。さらに、仮に遺留分減殺による取得であったとしても、既に法定相続分による相続登記が完了している以上、その後に受遺者Eから新たに取得した持分は、登記完了後の実体変更に該当する。したがって、遡及的に登記の誤りを正す更正登記の対象にはなり得ない。
結論
被上告人らの請求は棄却される。既存の相続登記を更正する方法で、その後に取得した持分の登記を実現することはできない。
実務上の射程
相続登記後の権利変動を更正登記で処理しようとする実務上の誤りを否定した事例。答案上は、物権変動の時系列と登記の種類の整合性(更正か移転か)を論じる際に活用できる。また、補足意見に触れられている「遺言執行者がいる場合の登記手続の本則(抹消および遺贈の履行)」との対比でも重要である。
事件番号: 平成10(オ)1499 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: その他
特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、右所有権移転登記の抹消登記手続のほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができる。
事件番号: 平成15(受)670 / 裁判年月日: 平成16年4月20日 / 結論: その他
共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができる。
事件番号: 昭和40(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和41年7月14日 / 結論: 棄却
遺留分権利者の減殺請求権は形成権であると解すべきである。
事件番号: 昭和53(オ)190 / 裁判年月日: 昭和57年3月4日 / 結論: 棄却
遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等は、民法一〇四二条所定の消滅時効に服しない。