遺留分権利者の減殺請求権は形成権であると解すべきである。
遺留分権利者の減殺請求権の性質。
民法1031条
判旨
遺留分減殺請求権は形成権であり、受贈者等に対する意思表示によって行使すれば、法律上当然に減殺の効力を生ずる。そのため、期間内に適法な意思表示がなされた後は、当該権利自体の消滅時効を検討する余地はない。
問題の所在(論点)
遺留分減殺請求権(旧民法1031条)の法的性質は何か。また、期間内に減殺の意思表示をした場合、その後も同法1042条(現1048条)による消滅時効の適用があるか。
規範
遺留分減殺請求権(旧民法1031条)は、形成権であると解される。その行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によってなせば足り、裁判上の請求を要しない。一度意思表示がなされれば、法律上当然に減殺の効力を生じ、権利行使の効果が確定的に発生する。
重要事実
遺留分権利者である被上告人は、相続の開始および減殺すべき本件遺贈があったことを昭和36年2月26日に知った。その後、1年の期間内である昭和37年1月10日に、受遺者等に対して減殺の意思表示を行った。これに対し、上告人側は遺留分減殺請求権が時効により消滅したと主張して争った。
事件番号: 昭和41(オ)641 / 裁判年月日: 昭和41年10月20日 / 結論: 棄却
準備書面に記載した形成権行使の意思表示は当該準備書面を相手方に受領せしめた時に行使されたと認めることもできる。
あてはめ
本件において、被上告人は遺贈の事実を知った時から1年以内という法定期間内に減殺の意思表示を行っている。形成権である減殺請求権が意思表示によって行使された以上、その時点で法律上当然に減殺の効力が生じ、権利関係は確定する。したがって、一度適法に行使された後においては、もはや行使される前の権利を対象とする消滅時効(旧1042条)を適用する余地はないと評価される。
結論
被上告人の意思表示により確定的に減殺の効力が生じており、消滅時効の主張は採用されない。
実務上の射程
現行法下の遺留分侵害額請求権(1046条以下)においても、その行使が形成権的性質を有し、意思表示により金銭債権が発生するという構造は維持されているため、本判決の「意思表示により効力が生じ、その後に期間制限の問題は生じない」という論理は、期間内に請求権を行使したかどうかの判断において現在も射程を有する。
事件番号: 昭和53(オ)190 / 裁判年月日: 昭和57年3月4日 / 結論: 棄却
遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等は、民法一〇四二条所定の消滅時効に服しない。
事件番号: 昭和54(オ)907 / 裁判年月日: 昭和57年11月12日 / 結論: 棄却
一 民法一〇四二条にいう減殺すべき贈与があつたことを知つた時とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知つた時をいう。 二 遺留分権利者が、減殺すべき贈与の無効を訴訟上主張していても、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたことを認識していたときは、その無効を信じていたため遺留分減殺請求権を行使しなかつたこと…
事件番号: 昭和40(オ)944 / 裁判年月日: 昭和41年4月15日 / 結論: 棄却
民法第一六二条第二項にいう平穏の占有とは、占有者がその占有を取得し、または、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有を指称するものであり、不動産所有者その他占有の不法を主張する者から、異議をうけ、不動産の返還、占有者名義の所有権移転登記の抹消手続方の請求があつても、これがため、その占有が平穏でな…