準備書面に記載した形成権行使の意思表示は当該準備書面を相手方に受領せしめた時に行使されたと認めることもできる。
準備書面に記載した形成権行使の意思表示がなされた時期
民訴法243条,民法97条
判旨
遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺)等の私法上の意思表示を記載した準備書面の副本が相手方に送達された場合、その到達時をもって意思表示の効力が発生する。
問題の所在(論点)
私法上の意思表示を記載した準備書面について、その意思表示の効力発生時期はいつか。準備書面が口頭弁論で「陳述」された時か、それとも「副本が相手方に到達」した時か。
規範
準備書面は本来、口頭弁論を準備するための書面であるが、当事者がこれを利用して私法上の意思表示を記載し、その副本を相手方に交付して意思表示を到達させることも許される。この場合、当該意思表示の効力は、副本が相手方に到達した時に発生する。
重要事実
被相続人Dから上告人への不動産贈与に対し、遺留分権利者である被上告人らが遺留分減殺(現行法の遺留分侵害額請求に相当)の意思表示を記載した準備書面を作成した。当該準備書面の副本は、昭和35年9月9日頃、上告人の訴訟代理人に受領された。上告人側は、準備書面の陳述がなされた口頭弁論期日ではなく副本受領時に意思表示の効力を認めるのは不当であり、除斥期間(現行法の消滅時効)が経過している旨を主張した。
事件番号: 昭和40(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和41年7月14日 / 結論: 棄却
遺留分権利者の減殺請求権は形成権であると解すべきである。
あてはめ
当事者が準備書面に私法上の意思表示を記載し、その副本を相手方に交付することによって意思表示を到達させることは禁止されていない。本件では、被上告人らの訴訟代理人が遺留分減殺の意思表示を記載した準備書面副本を、上告人訴訟代理人に受領させた事実が認められる。したがって、民法一般の意思表示の効力発生時期に関する法理(到達主義)に基づき、副本が受領された日をもって意思表示がなされたものと評価される。
結論
準備書面副本が相手方に受領された時点で意思表示の効力は発生する。本件の意思表示は、副本受領時点において期間内になされたものであり、有効である。
実務上の射程
訴訟上の形成権行使(相殺、解除、遺留分侵害額請求等)の時期が問題となる事案で活用する。期間制限の間際で訴状や準備書面を提出する場合、口頭弁論での陳述を待たずとも副本送達により効力が生じるという判断枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和54(オ)907 / 裁判年月日: 昭和57年11月12日 / 結論: 棄却
一 民法一〇四二条にいう減殺すべき贈与があつたことを知つた時とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知つた時をいう。 二 遺留分権利者が、減殺すべき贈与の無効を訴訟上主張していても、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたことを認識していたときは、その無効を信じていたため遺留分減殺請求権を行使しなかつたこと…
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。
事件番号: 昭和43(オ)256 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 破棄差戻
不動産所有権譲渡を内容とする代物弁済契約は、その契約後所有権移転登記手続完了前になされた弁済によつてその効力を失う。
事件番号: 昭和45(オ)712 / 裁判年月日: 昭和45年12月10日 / 結論: 棄却
乙が甲から所有権移転登記を経た不動産について、甲より登記原因の無効を理由とする所有権移転登記抹消登記手続請求の訴が提起され、その予告登記がされたのち右訴の口頭弁論の終結前に乙から第三者丙に所有権移転登記がされ、ついで右訴について甲勝訴の判決が確定した場合において、甲の丙に対する右所有権移転登記の抹消登記手続請求の訴を排…