不動産所有権譲渡を内容とする代物弁済契約は、その契約後所有権移転登記手続完了前になされた弁済によつてその効力を失う。
不動産の代物弁済契約後その所有権移転登記手続完了前になされた弁済と代物弁済契約の効力
民法482条
判旨
不動産の譲渡による代物弁済の効力は、原則として所有権移転登記手続が完了した時に生じるため、登記完了前に債務が弁済された場合、代物弁済の合意は効力を失う。
問題の所在(論点)
不動産を目的物とする代物弁済予約または合意において、債務消滅の効力が発生する時期はいつか。また、登記完了前に本旨弁済がなされた場合、代物弁済の効力はどうなるか。
規範
債務者が負担する給付に代えて不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合、債務消滅の効力は、単なる所有権移転の意思表示のみでは足りず、原則として所有権移転登記手続の完了によって生じる。したがって、代物弁済の合意後であっても、登記手続の完了前に既存債務が弁済されたときは、既存債務の消滅により代物弁済の合意はその効力を失う。
重要事実
上告人の代理人Dは、昭和19年12月10日頃、被上告人らの先代Eに対し、貸金債務の代物弁済として本件山林の所有権を移転する旨の意思表示をした。しかし、当該山林の所有権移転登記手続が完了したのは昭和21年3月12日であった。一方、上告人は、登記完了前の昭和20年6月28日に本件貸金債務を弁済したと主張していたが、原審はこの点について判断を示さなかった。
事件番号: 昭和57(オ)111 / 裁判年月日: 昭和57年6月4日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済契約の意思表示がされたときは、これにより該不動産の所有権移転の効果が生ずる。
あてはめ
本件において、代物弁済の意思表示は昭和19年になされたが、対抗要件たる所有権移転登記手続の完了は昭和21年である。本判例の規範に照らせば、債務消滅の効力が発生するのは登記完了時である。そうすると、上告人が主張する昭和20年の弁済が事実であれば、それは登記完了前になされた本旨弁済にあたる。この場合、既存債務は弁済により消滅するため、未だ債務消滅の効力を生じさせていない代物弁済の意思表示は、その目的を失い効力を失うこととなる。
結論
不動産の代物弁済による債務消滅は登記完了時に生じるため、登記前に弁済がなされれば代物弁済は効力を失う。原審は弁済の有無を判断すべきであったため、破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
代物弁済(民法482条)の要物性に関する重要判例である。答案上は、不動産の場合は登記が「給付」の完了として必要であることを論証する際に用いる。また、債権者代位権の行使等において、債務消滅の成否が問題となる場面で、登記の有無を基準とする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)641 / 裁判年月日: 昭和41年10月20日 / 結論: 棄却
準備書面に記載した形成権行使の意思表示は当該準備書面を相手方に受領せしめた時に行使されたと認めることもできる。
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…