不動産を目的とする代物弁済契約の意思表示がされたときは、これにより該不動産の所有権移転の効果が生ずる。
不動産を目的とする代物弁済と該不動産所有権移転の時期
民法176条,民法482条
判旨
不動産を給付の内容とする代物弁済において、債務消滅の効力は対抗要件の具備時に発生するが、所有権移転の効力自体は原則として当事者間の意思表示によって生ずる。
問題の所在(論点)
不動産の譲渡をもってする代物弁済において、所有権移転という「物権変動の効力」が発生するために、対抗要件である登記の具備が必要か。また、債務消滅の効力と所有権移転の効力の発生時期は区別されるべきか。
規範
1. 代物弁済(民法482条)による債務消滅の効力は、単なる当事者の意思表示のみでは足りず、不動産の場合は登記等の対抗要件を具備したときに生ずる。 2. もっとも、代物弁済の目的物たる不動産の所有権移転の効力は、別段の合意がない限り、原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示のみによって生ずる。
重要事実
上告人は、本件土地の所有権取得を主張するにあたり、不動産の代物弁済による所有権移転の効果が発生するためには、債権者への所有権移転登記が完了している必要があるとした原審の判断には違法があると主張した。事案の詳細は判決文からは不明であるが、原審は登記の欠如を理由に所有権移転を否定した可能性がある。
事件番号: 昭和43(オ)256 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 破棄差戻
不動産所有権譲渡を内容とする代物弁済契約は、その契約後所有権移転登記手続完了前になされた弁済によつてその効力を失う。
あてはめ
1. 債務消滅の効力について、代物弁済は要物契約的性質を有するため、不動産譲渡の場合は対抗要件を具備し、債権者が第三者に対抗できる状態になって初めて「弁済」としての目的を達し、債務が消滅すると解される。 2. 他方で、物権変動の効力については、民法176条の原則に従い、当事者間の意思表示のみによって生ずる。代物弁済も所有権移転を目的とする契約である以上、これと異なり登記を効力発生要件とする特段の根拠はない。
結論
不動産の代物弁済による所有権移転の効力発生に登記は不要である。したがって、登記がなければ効力が生じないとした原審の判断は失当であるが、結論においては正当であるとして上告は棄却された。
実務上の射程
代物弁済の「債務消滅時期」と「物権変動時期」を峻別して論じる際に必須の判例である。答案では、債務消滅(482条)の要件を論じる文脈と、物権的請求権の根拠となる所有権帰属(176条)を論じる文脈を分けるために用いる。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)959 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
一〇万円の債務の担保として時価八三万六〇〇〇円の土地(但し五五万三二〇円の国税滞納処分による差押がある)について条件付代物弁済契約を締結していた場合、利息債権六〇〇〇円の未払を理由に、右条件を成就を主張することは、その未払の生じた理由が使者の横領による等原判決認定の諸事件(原判決理由参照)のもとにおいては信義則に照らし…