一〇万円の債務の担保として時価八三万六〇〇〇円の土地(但し五五万三二〇円の国税滞納処分による差押がある)について条件付代物弁済契約を締結していた場合、利息債権六〇〇〇円の未払を理由に、右条件を成就を主張することは、その未払の生じた理由が使者の横領による等原判決認定の諸事件(原判決理由参照)のもとにおいては信義則に照らして許されない。
条件付代物弁済契約において条件成就を主張することが信義則に照らして許されないとされた事例
民法1条2項,民法482条
判旨
滞納処分を免れる目的で行われた代物弁済について、信義則に照らして無効と判断される場合があることを認めた。
問題の所在(論点)
滞納処分を免れる目的で行われた代物弁済が、信義則に反して無効となるか。
規範
契約が成立していても、その目的や経緯が社会的に著しく不相当であり、信義則(民法1条2項)に照らして容認できない場合には、当該契約(代物弁済等)は無効となる。
重要事実
上告人が滞納処分を免れるために本件代物弁済を行ったという事情が存在した。原審はこの滞納処分を免脱する目的等の諸事情を考慮し、信義則違反を理由に代物弁済を無効と判断した。
あてはめ
事件番号: 昭和39(オ)1487 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: 破棄差戻
停止条件付代物弁済契約は、弁済期日に債務不履行のあつた場合に当初の債務全額の弁済に代えて目的物の所有権を移転する趣旨と解すべきであり、債務の一部弁済があつた場合にも、その趣旨は異なるものでなく、その残債務の弁済に代えて目的物の所有権を移転する趣旨と解すべきではない。
本件代物弁済は滞納処分を考慮した事情の下で行われており、そのような脱法的な意図に基づく権利行使は、法の求める誠実な取引関係に反する。原審が認定した諸事情を総合すれば、信義則に照らしてその効力を否定すべき特段の事情があるといえる。
結論
本件代物弁済は信義則に照らして無効であり、上告を棄却する。
実務上の射程
代物弁済の有効性が争われる場面において、詐害行為取消権等の要件を充たさない場合であっても、公序良俗違反や信義則違反による無効主張を検討する際の根拠となり得る。ただし、本判決は事実関係の詳細が乏しいため、極めて例外的な場合に適用されるべき規範として扱うのが適切である。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
事件番号: 昭和33(オ)992 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済の予約に基づく所有権移転が、不動産価格と債務額に大きな差がある場合でも、相手方の窮迫等を利用して過当な利益を図る目的がない限り、直ちに公序良俗に反して無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人から37万円を借り受け、利息制限法に基づく引き直し後の元本債務は38万1100円であっ…
事件番号: 昭和36(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和38年1月18日 / 結論: 破棄差戻
譲渡担保契約において、期限に債務の弁済がないときは担保物件を債務の代物弁済に供する旨の約定を含む場合、被担保債権額に比し担保物件の価額が著しく高額であつて、債務者の経済的困窮に乗じて右の約定をなしたものとして右約定部分を公序良俗に反し無効と解すべきときでも、必ずしも譲渡担保契約全部が無効となるとは限らない。
事件番号: 昭和35(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和36年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者の窮迫に乗じ不当な代物弁済契約を締結したといった事情がない限り、予約完結権の行使が公序良俗や信義則に反するものとはいえない。また、利息制限法施行前の合意に基づく遅延損害金を計算の基礎とすることも、直ちに権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、被上告人(債権者)との間…