乙が甲から所有権移転登記を経た不動産について、甲より登記原因の無効を理由とする所有権移転登記抹消登記手続請求の訴が提起され、その予告登記がされたのち右訴の口頭弁論の終結前に乙から第三者丙に所有権移転登記がされ、ついで右訴について甲勝訴の判決が確定した場合において、甲の丙に対する右所有権移転登記の抹消登記手続請求の訴を排斥することは、予告登記の存在により、妨げられるものではない。
予告登記の効力
民法177条,不動産登記法3条
判旨
口頭弁論終結前に目的物を譲り受けた第三者は、民事訴訟法上の「承継人」に該当せず、前訴の既判力を受けない。また、予告登記は第三者への警告を目的とするものであり、権利の存否や対抗力に影響を与えない。
問題の所在(論点)
口頭弁論終結前に目的物を譲り受けた第三者に既判力が及ぶか(民訴法115条1項2号の「承継人」の範囲)。また、予告登記の有無が実体法上の権利の存否や対抗力に影響を与えるか。
規範
確定判決の既判力は、当事者、口頭弁論終結後の承継人、またはその者のために目的物を所持する者にのみ及ぶ(民訴法115条1項各号)。口頭弁論終結前に目的物を取得した者は承継人に含まれない。また、予告登記(旧不動産登記法)は、訴えの提起を公示して善意の第三者を保護する警告的効力を有するにとどまり、実体法上の権利関係や対抗力に影響を及ぼすものではない。
重要事実
上告人AとDとの間の土地建物に関する前訴において、口頭弁論終結日は昭和40年9月27日であった。一方、被上告人Bは、当該口頭弁論終結前の昭和38年3月19日にDから本件不動産を取得し、同日付で所有権移転登記を完了していた。Aは、Bに対して前訴判決の効力が及ぶことや、予告登記の存在が権利関係に影響することを主張した。
事件番号: 昭和34(オ)470 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未登記不動産の所有者がこれを譲渡した後でも、登記を備えない限り譲渡人は完全な無権利者とはならない。したがって、譲渡人名義でなされた保存登記およびそれを前提とする仮差押登記は、対抗関係の法理により有効である。 第1 事案の概要:訴外Dは、自己の所有する本件建物を未登記のまま上告人Aに売り渡した。その…
あてはめ
被上告人Bが本件不動産を取得し登記を経たのは昭和38年であり、前訴の口頭弁論終結日である昭和40年よりも前である。したがって、Bは「口頭弁論終結後の承継人」に当たらない。また、予告登記は登記原因の無効等による訴えの提起を第三者に警告するための制度にすぎず、登記本来の効力である対抗力を付与するものではないため、これによってAの権利が保全されたりBに対抗できるようになったりするものではない。
結論
被上告人Bに前訴判決の既判力は及ばず、予告登記の存在も上告人Aの権利の存否や対抗力に何ら関係しない。
実務上の射程
既判力の主観的範囲(115条1項2号)における「承継人」が、口頭弁論終結「後」の者に限定されることを確認した基礎的判例である。また、現在は廃止された予告登記に関する判示であるが、登記に警告的効力しかない場合の法的性質を論じる際の参考となる。
事件番号: 昭和47(オ)1103 / 裁判年月日: 昭和48年11月30日 / 結論: 棄却
適法な呼出を受けながら当事者双方が口頭弁論期日に出頭しない場合に、本人尋問の採用を取消す決定が言渡されたときは、右決定の告知は、当事者双方に対してその効力を生ずる。
事件番号: 昭和45(オ)719 / 裁判年月日: 昭和48年12月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当不動産の譲渡を受けた第三者は、抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和26(オ)113 / 裁判年月日: 昭和27年5月2日 / 結論: 破棄差戻
調停により取得した不動産の二分の一の共有持分権に基く分割請求権があることを原因として提起した共有物分割請求訴訟において、その請求を棄却した確定判決の既判力は、判決の理由において、共有権の存否につき判断をしている場合であつても、右の調停により共有持分権を取得したかどうかの点までは及ばない。
事件番号: 昭和43(オ)446 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
予告登記の存することの一事から、これに後行して係争不動産につき物権の得喪変更に関する法律行為を為した第三者が、当該登記原因の瑕疵につき悪意と推定されるべき筋合はない。