予告登記の存することの一事から、これに後行して係争不動産につき物権の得喪変更に関する法律行為を為した第三者が、当該登記原因の瑕疵につき悪意と推定されるべき筋合はない。
予告登記と悪意の推定
不動産登記法3条
判旨
予告登記が存在しても、その一事から、その後に物権変動の法律行為を行った第三者が登記原因の瑕疵について悪意と推定されることはない。通謀虚偽表示の善意の第三者から競落した者は、自己の善意を問わず有効に所有権を取得する。
問題の所在(論点)
不動産登記簿に予告登記が付されている場合に、それにより第三者が登記原因の瑕疵(虚偽表示)について悪意であると推定されるか。また、善意の抵当権者から競落した者の権利取得が認められるか(民法94条2項の第三者の範囲と効力)。
規範
1. 予告登記が存在しても、そのこと自体から当然に、その後に物権変動を行った第三者が前登記原因の瑕疵(虚偽表示等)について悪意であると推定されることはない。2. 民法94条2項の「第三者」が善意であれば、その者から権利を取得した転得者は、転得者自身の善意・悪意を問わず、対抗関係によらず有効に権利を取得できる(絶対的構成)。
重要事実
本件土地の共有者らとEとの間で仮装売買が行われ、これに基づき抵当権を設定したDは、当該仮装売買について善意であった。その後、Dによる抵当権実行(競売)の申し立てにより、被上告人が本件土地を競落した。本件では、不動産登記簿上に予告登記が存在していたため、被上告人が悪意と推定されるべきか、また仮装売買の無効を被上告人に対抗できるかが争われた。
事件番号: 昭和46(オ)803 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 破棄差戻
甲が、乙と相通じ、仮装の所有権移転請求権保全の仮登記手続をする意思で、乙の提示した所有権移転登記手続に必要な書類に、これを仮登記手続に必要な書類と誤解して署名押印したところ、乙がほしいままに右書類を用いて所有権移転登記手続をしたときは、甲は、乙の所有権取得の無効をもつて善意・無過失の第三者に対抗することができない。
あてはめ
予告登記は、登記原因の無効・取消しによる登記の抹消等の訴えが提起されたことを公示する制度にすぎず、実体法上の権利関係を確定させるものではない。したがって、予告登記の存在のみをもって、直ちに第三者が悪意であると事実上推定されることはない。本件では、抵当権者Dが善意である以上、Dは94条2項の第三者として保護され、有効な抵当権を取得する。その競落人である被上告人は、Dの有効な権利を承継するものであるから、被上告人自身の善意・悪意にかかわらず、仮装売買の無効を対抗されることはない。
結論
予告登記が存在しても第三者が悪意と推定されることはない。善意の抵当権者Dから競落した被上告人の所有権取得は有効である。
実務上の射程
予告登記制度(廃止前)に関する判例であるが、公示があるからといって直ちに悪意が推定されるわけではないという判断は、現在も他の公的な公示制度と善意・悪意の認定において参考になる。また、善意の第三者からの転得者が、自身の善悪を問わず保護される(絶対的構成)ことを前提とした実務運用を支える判例として重要である。
事件番号: 昭和53(オ)1213 / 裁判年月日: 昭和55年9月11日 / 結論: その他
一 甲と乙との通謀により甲から乙に対し抵当権を設定したものと仮装した抵当権設定登記が経由されたのち、乙が善意の丙に対し転抵当権を設定し、丙を権利者とする転抵当権設定登記が経由された場合において、丙は、いまだ民法三七六条所定の対抗要件を具備しないときであつても、原抵当権の設定の無効を理由とする原抵当権設定登記の抹消につい…
事件番号: 昭和43(オ)892 / 裁判年月日: 昭和44年4月25日 / 結論: 棄却
甲所有の土地建物が乙に贈与されたが、その登記が未了のため、乙が甲を相手に処分禁止の仮処分をしている場合において、不動産周旋業者で甲および乙と永年交際し右建物を賃借している丙が、土地建物の所有権の帰属につき甲と乙が係争中であることを知つているばかりでなく、甲が乙を欺罔して右仮処分の執行を取り消させ、土地建物が乙名義になる…
事件番号: 昭和44(オ)1009 / 裁判年月日: 昭和45年6月2日 / 結論: その他
甲が、融資を受けるため、乙と通謀して、甲所有の不動産について売買がされていないのにかかわらず、売買を仮装して甲から乙に所有権移転登記手続をした場合において、乙がさらに丙に対し右融資のあつせん方を依頼して右不動産の登記手続に必要な登記済証、委任状、印鑑証明書等を預け、丙がこれらの書類により乙から丙への所有権移転登記を経由…
事件番号: 昭和43(オ)732 / 裁判年月日: 昭和45年11月19日 / 結論: 破棄差戻
甲が、乙からその所有不動産を買い受けたものであるにもかかわらず、乙に対する貸金を被担保債権とする抵当権と、右貸金を弁済期に弁済しないことを停止条件とする代物弁済契約上の権利とを有するものとして、抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記を経由した場合において、丙が乙から右不動産を買い受けて所有権取得登記を経由した…