抵当不動産の譲渡を受けた第三者は、抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
抵当不動産の第三取得者と抵当権の被担保債権の消滅時効の援用
民法145条,民法166条,民法369条
判旨
抵当権が設定された不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するため、民法145条に基づき当該債権の消滅時効を援用することができる。
問題の所在(論点)
抵当不動産の譲渡を受けた第三取得者は、民法145条にいう「時効を援用しうる者」として、被担保債権の消滅時効を援用することができるか。特に「直接利益を受ける者」に含まれるかが問題となる。
規範
民法145条により消滅時効を援用しうる者は、権利の消滅により「直接利益を受ける者」に限定される。抵当権の設定および登記がなされている不動産の譲渡を受けた第三者は、被担保債権が消滅すれば、それに伴い抵当権の消滅を主張しうる関係にあるため、当該債権の消滅により「直接利益を受ける者」にあたる。
重要事実
不動産の当初所有者であるD社は、被上告人(債権者)から200万円を借り入れ、その担保として本件不動産に抵当権を設定し、その登記を完了した。その後、上告人(第三取得者)は、D社から代物弁済により本件不動産の所有権を取得した。上告人は、被上告人に対し、被担保債権である貸金債権の消滅時効を援用した。
事件番号: 昭和39(オ)523 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 破棄自判
一 他人の債務のため自己の所有物をいわゆる弱い譲渡担保に供した者は、右債務の消滅時効を援用することができる。 二 債務者の時効の利益の放棄は、当該債務のため自己の所有物をいわゆる弱い譲渡担保に供した者に影響を及ぼさない。
あてはめ
上告人は、抵当権が設定され、かつ登記が存在する本件不動産をD社から譲り受けている。この場合、抵当権の付着した所有権を取得したことになるが、被担保債権が消滅すれば、付随して抵当権も消滅し、上告人は負担のない完全な所有権を確保できる。このような法的地位にある者は、被担保債権の消滅によって直接的に権利上の利益を享受する関係にあるといえる。したがって、上告人は「直接利益を受ける者」として援用権を有する。
結論
抵当不動産の第三取得者は、被担保債権の消滅時効を援用することができる。したがって、上告人の援用を認めなかった原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
本判決は、時効援用権者の範囲を確定したリーディングケースであり、物上保証人や後順位抵当権者と並び、第三取得者が当然に援用権を有することを示した。答案上は、145条の「当事者(改正前)」または「当事者(改正後の解釈)」の定義として「直接利益を受ける者」という規範を立てた直後、第三取得者がこれに該当することを述べる際に必須となる判例である。
事件番号: 昭和45(オ)712 / 裁判年月日: 昭和45年12月10日 / 結論: 棄却
乙が甲から所有権移転登記を経た不動産について、甲より登記原因の無効を理由とする所有権移転登記抹消登記手続請求の訴が提起され、その予告登記がされたのち右訴の口頭弁論の終結前に乙から第三者丙に所有権移転登記がされ、ついで右訴について甲勝訴の判決が確定した場合において、甲の丙に対する右所有権移転登記の抹消登記手続請求の訴を排…
事件番号: 平成9(オ)1771 / 裁判年月日: 平成11年10月21日 / 結論: 棄却
後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。
事件番号: 昭和35(オ)1470 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
右登記を無効として抹消を求めることはできない。(昭和三〇年(オ)第六三二号同三三年五月九日第二小法廷判決、民集一二巻九八九頁参照)。
事件番号: 昭和44(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和45年2月24日 / 結論: 棄却
甲は、乙が代表者である丙組合と丁会社との紛争解決などのために、戊に合計九〇万円を融資し、その債務担保のため本件土地につき、戊から譲渡担保の設定を受け、一方、乙は、右のような事情から右担保権を取得した甲のために、その権利行使の障害となる根抵当権を自ら放棄したものであるなど判示事実関係のもとにおいては、乙は、その後戊との間…