一 受贈者に対し減殺請求をしたときは、その後に受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対してさらに減殺の請求をすることはできない。 二 受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。
一 減殺請求後の転得者に対する減殺請求の許否 二 転得者に対する減殺請求権の消滅時効の起算点
民法1040条,民法1042条
判旨
遺留分減殺請求(現・遺留分侵害額請求)により取得した不動産の所有権は、登記を得なければ、その後に目的不動産を譲り受け登記を完了した第三者に対抗できない。
問題の所在(論点)
遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権を、請求後に当該不動産を譲り受け登記を備えた第三者に対して対抗するために登記を要するか(民法177条の「第三者」に該当するか)。
規範
遺留分減殺による権利の取得は、民法177条の規定の適用を受ける。したがって、減殺請求によって復帰した物権変動については、登記を備えなければ、その後に出現した第三者に対してその権利を主張(対抗)することができない。
重要事実
被相続人Eから贈与を受けたDに対し、上告人らが遺留分減殺請求を行った。これにより上告人らは本件不動産の所有権を一部取得したが、その旨の登記は未了であった。その後、Dの相続人であるB2およびB3が本件不動産をB1へ売却し、B1が所有権移転登記を完了した。上告人らはB1に対し、減殺請求による所有権の取得を主張して対抗できるかが争われた。
事件番号: 昭和31(オ)32 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 破棄差戻
甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡つて合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかつた丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない
あてはめ
上告人らは遺留分減殺請求権を行使し、法的には本件不動産の所有権を回復したといえる。しかし、本件不動産を買受け所有権移転登記を経た被上告人B1は、減殺請求後に現れた第三者に該当する。上告人らは、減殺請求による所有権の取得という物権変動について登記を備えていないため、登記を具備したB1に対してその所有権を対抗し得ない。また、登記義務者の地位の承継についても、B1が登記を得た以上、特段の事情がない限り履行不能に帰したと解される。
結論
未登記の上告人らは、減殺請求後に所有権移転登記を経た被上告人に対し、所有権の取得を対抗できない。
実務上の射程
遺留分減殺請求(改正後の侵害額請求における現物返還特約等を含む)に伴う復帰的物権変動は、177条の対抗問題として処理される。司法試験の答案上は、減殺請求により「当然に」権利が復帰することを前提としつつ、その後の第三者との関係では対抗関係に立つという二重譲渡類似の構成(復帰的物権変動)を明示するために用いる。
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
事件番号: 平成10(オ)994 / 裁判年月日: 平成12年5月30日 / 結論: 破棄自判
遺贈の対象不動産についてされた共同相続登記を右登記後の遺留分減殺請求による持分の相続登記に更正することはできない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和33(オ)416 / 裁判年月日: 昭和38年3月28日 / 結論: 棄却
一 甲が登記簿上乙の所有名義になつている甲所有の建物を丙に譲渡した後、丙の所有権取得登記前に、甲の債権者丁が右建物についてなした乙より甲への代位による所有権移転登記ならびに甲を債務者とする仮差押の登記は、いずれも有効である。 二 右仮差押の登記後丙の所有権取得登記がなされても、丙は建物所有権取得をもつて丁に対抗すること…
事件番号: 昭和31(オ)172 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記は物権変動の対抗要件にすぎず、第三者が登記名義を有しない実体上の所有者を認め、登記名義人への権利帰属を否認することは妨げられない。また、未登記不動産の譲受人が直接自己名義で行った所有権保存登記は、現在の権利状態と符合する限り有効である。 第1 事案の概要:本件土地は実質的にA1の所有であ…