1 裁判員制度と憲法13条,18条後段,19条,20条,21条,31条,32条,37条 2 死刑の量刑が維持された事例(長野一家3人強盗殺人事件)
(1につき)憲法13条,憲法18条後段,憲法19条,憲法20条,憲法21条,憲法31条,憲法32条,憲法37条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 (2につき)死刑事件
判旨
3名を殺害した強盗殺人等の事案において、被告人が動機等に酌むべき事情を有し従属的な立場にあったとしても、犯行の重要かつ不可欠な役割を果たし結果が極めて重大であるときは、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑選択の許容性(量刑不当の有無)。特に、被害者が3名にのぼる一方で、被告人が主犯Aに従属する立場にあり、被害者らから不当な扱いを受けていたという動機面での酌量要素がある場合の評価が問題となる。
規範
死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡の観点からも一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ない場合に許される(永山基準参照)。
重要事実
被告人は、日常的に暴力を受けていた勤務先の会長らに対し恨みを抱く同僚Aに同調し、Aらと共謀して会長親子を殺害し現金を強奪することを計画した。被告人は、実行時に不審を抱いた専務の妻を口封じのため絞殺した上、昏睡状態の専務及び就寝中の会長を次々と絞殺して約416万円を強取し、遺体を遺棄した。被告人は準備段階からAの相談役となり、実行段階では3名のうち2名の殺害に自ら手を下すなど不可欠な役割を担った。
あてはめ
まず、結果の重大性について、一度に3名の生命を奪った結果は誠に重大である。犯行態様も冷酷かつ非情であり、専務の妻殺害については強盗殺人完遂の障害排除という身勝手な動機に基づく。次に、動機の経緯には会長らによる暴力的扱い等の酌むべき事情があるが、他の解決策を試みず安易かつ短絡的である。被告人の役割は、単なる従属者にとどまらず、準備段階からAを精神的に支え、実行時も2名の殺害を自ら担い多額の利益分配を受けるなど、共犯者間で重要かつ不可欠であったといえる。
事件番号: 平成26(あ)477 / 裁判年月日: 平成28年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】3名の生命を奪った強盗殺人、死体遺棄被告事件において、犯行に至る動機に被害者からの暴力等の酌むべき事情があるとしても、犯行を主導し冷酷な態様で殺害を実行した責任は極めて重大であり、自首等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、勤務先の会長親子から長年暴力を受け拘束…
結論
被告人の刑事責任は極めて重大であり、反省の態度や遺族への慰謝等の事情を十分に考慮しても、第一審の死刑判決を維持した原判決は相当であり、死刑の科刑はやむを得ない。
実務上の射程
被害者が3名以上にのぼる強盗殺人事件において、被告人が実行犯として中心的な役割を果たしている場合、動機に被害者側の非があるなどの情状があっても、死刑回避の決定的な事情とはなりにくいことを示している。裁判員裁判の量刑判断を是認する際の考慮要素としても有用である。
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…
事件番号: 平成15(あ)600 / 裁判年月日: 平成18年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪に問われた被告人に対し、犯行の残虐性、結果の重大性、および動機の身勝手さを重視し、死刑に処した一審判決を維持した原判決は、量刑の衡平を欠くものではなく相当である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者2名と共謀のうえ、金品強取の目的で、何ら落ち度のない女性2名を絞殺した。犯行は計画的か…