国から占用許可を得て市が公園の一部として開放し維持管理していた人工砂浜での埋没事故について,同砂浜を含む海岸における工事の監督,巡視や海岸保全施設の管理等の事務を担当していた国土交通省職員に同砂浜に関する安全措置を講ずべき業務上の注意義務があったとされた事例
刑法(平成18年法律第36号による改正前のもの)211条1項前段
判旨
国が所有し直轄工事区域内にある海岸保全施設(人工砂浜)において、日常的・具体的な管理を地方自治体が占用許可に基づき行っていたとしても、施設の瑕疵により重大な事故が発生する具体的危険を予見し得た状況下では、国の担当出張所長には、自ら又は自治体に要請して安全措置を講ずべき業務上の注意義務が認められる。
問題の所在(論点)
国の直轄工事区域内の海岸保全施設において、地方自治体が占用許可に基づき日常的・具体的な管理を担っていた場合、国の担当職員(出張所長)に、当該施設での事故を防止するための業務上の注意義務が認められるか。
規範
業務上過失致死罪(刑法211条前段)における注意義務の有無は、対象施設の所有・管理権限の所在、事故発生の予見可能性、当該公務員の地位・職責・具体的権限、および事故防止に向けた実際の活動状況等を総合して判断すべきである。特に、行政主体間の管理責任が分担されている場合であっても、施設自体の瑕疵に起因する危険を把握し、かつ実効的な回避措置を講じ得る立場にある者には、直接の安全措置または他者への要請を通じた事故防止義務が課される。
重要事実
本件事故は大蔵海岸の人工砂浜で発生した陥没に被害者が生き埋めとなったものである。本件砂浜は国(国土交通省)が所有し直轄工事区域内であったが、兵庫県知事が海岸管理者であり、明石市が占用許可を得て海浜公園として一般開放し日常管理を行っていた。事故前、砂浜では陥没が頻発しており、被告人甲(国側の東播海岸出張所長)は、明石市から防砂板の破損(施設の瑕疵)が原因であるとの説明を受け、抜本的対策を要請されていた。甲は視察等を通じて危険性を認識し、国として対策を検討し始めていたが、砂浜全域への立入禁止措置等の具体的な安全措置は講じられないまま本件事故が発生した。
事件番号: 平成10(あ)677 / 裁判年月日: 平成13年2月7日 / 結論: 棄却
県が発注したトンネル型水路部分を含む水路建設工事につき,トンネル内に周辺の河川からあふれ出た水が流れ込むのを防止する目的で構造物が設置され,当該構造物が周辺の河川からあふれ出た水の水圧で決壊することを予見することができたなど判示の事実関係の下においては,当該構造物の管理を担当する県職員は,決壊による危険を回避するため,…
あてはめ
第1に、本件砂浜は国が所有し、一度も海岸管理者に引き渡されていない直轄工事区域内にあるため、国が安全管理の基本的責任を負っていたといえる。第2に、明石市が日常管理を担っていたものの、陥没続発という異常事態への対応につき明確な取決めはなく、甲は市から抜本的対策を要請され、国側担当者として対策に取り組み始めていた。第3に、陥没の原因が国所有の構造物の瑕疵にあると認識されていた以上、国は周囲への影響を防ぐべき立場にあった。第4に、明石市は国から占用許可を受け監督を受ける地位にあるため、甲が要請すれば安全措置を講じたと認められる。以上より、甲の地位・職責・実際の活動状況に照らせば、自ら又は市に要請して安全措置を講ずべき具体的な注意義務が認められる。
結論
被告人甲には、本件砂浜にバリケードを設置する等の安全措置を講じ、あるいは明石市に要請して同措置を講じさせるべき業務上の注意義務が認められるため、業務上過失致死罪が成立する。
実務上の射程
本決定は、管理責任の所在が法令や契約上多層的(国・県・市)であっても、危険の源泉を支配し、かつ事実上回避措置を主導し得る立場にある公務員に対し、刑事上の注意義務を肯定した点に実務上の意義がある。
事件番号: 平成26(あ)747 / 裁判年月日: 平成28年7月12日 / 結論: 棄却
花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警備計画策定の第一次的責任者ないし現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と,同署副署長ないし署警備本部の警備副本部長として同署署長を補佐する立場にあった被告人とでは,分担する役割や事故発生の防止…
事件番号: 平成21(あ)359 / 裁判年月日: 平成24年2月8日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成19(あ)1634 / 裁判年月日: 平成22年5月31日 / 結論: 棄却
花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,雑踏警備に関し現場で警察官を指揮する立場にあった警察署地域官及び現場で警備員を統括する立場にあった警備会社支社長の両名において,いずれも上記のような事故の発生を容易に予見でき,かつ,機動隊による流入規制等を…
事件番号: 平成27(あ)741 / 裁判年月日: 平成29年6月12日 / 結論: 棄却
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