1 処分行政庁を補助して処分に関わる事務を行った組織は,それが行政組織法上の行政機関ではなく,法令に基づき処分行政庁の監督の下で所定の事務を行う特殊法人等又はその下部組織であっても,法令に基づき当該特殊法人等が委任又は委託を受けた当該処分に関わる事務につき処分行政庁を補助してこれを行う機関であるといえる場合において,当該処分に関し事案の処理そのものに実質的に関与したと評価することができるときは,行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当する。 2 国民年金法に基づき年金の給付を受ける権利の裁定に係る事務の委託を受けた日本年金機構の下部組織である事務センターが日本年金機構法等の定めに従って上記裁定に係る処分に関わる事務を行った場合において,上記事務センターが当該処分に関し事案の処理そのものに実質的に関与したと評価することができるか否かについて審理判断することなく,上記事務センターが行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当しないとした原審の判断には,違法がある。
1 行政組織法上の行政機関以外の組織が行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当する場合 2 日本年金機構の下部組織である事務センターが行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例
(1,2につき)行政事件訴訟法12条3項 (2につき)日本年金機構法3条,日本年金機構法27条1項2号,国民年金法16条,国民年金法109条の10第1項3号,国民年金法施行規則117条
判旨
行政事件訴訟法12条3項の「事案の処理に当たった下級行政機関」とは、行政組織法上の行政機関に限られず、法令に基づき処分行政庁を補助して実質的に関与した特殊法人等の下部組織も含まれる。実質的関与の有無は、処分の性質、関与の具体的態様、程度、処分への影響度等を総合考慮して判断すべきである。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に、行政組織法上の行政機関ではない特殊法人(日本年金機構)の下部組織が含まれるか。また、その判断基準はいかなるものか。
規範
行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」とは、処分等に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。処分行政庁を補助して事務を行う組織が、行政組織法上の行政機関ではなく、法令に基づき処分行政庁の監督下で事務を行う特殊法人等又はその下部組織であっても、(1)当該特殊法人等が委任・委託を受けた事務につき処分行政庁を補助する機関といえる場合において、(2)当該処分に関し事案の処理そのものに実質的に関与したと評価できるときは、同項の「下級行政機関」に該当する。実質的関与の有無は、処分の内容・性質に照らし、組織の関与の具体的態様、程度、処分に対する影響度等を総合考慮して決すべきであり、自ら積極的に調査・資料収集を行い意見を付して報告し、これに基づき処分がなされた場合などは実質的関与が認められ得る。
事件番号: 平成12(行フ)2 / 裁判年月日: 平成13年2月27日 / 結論: 棄却
1 行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たつた下級行政機関」とは,当該処分又は裁決に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。 2 国民年金法による障害基礎年金と地方公務員等共済組合法による退職共済年金の併給を受けていた者が,和歌山県知事の補助機関である和歌山東社会保険事務所の担当者に対し,…
重要事実
徳島県在住の抗告人が、国民年金法に基づく障害基礎年金の裁定請求を日本年金機構の徳島北年金事務所に提出した。これに対し、厚生労働大臣は不支給決定(本件処分)を行った。抗告人は徳島地裁に取消訴訟を提起したが、国(相手方)は、本件処分は本省で行われたものであり、徳島地裁には管轄がないとして、抗告人の普通裁判籍がある高松地裁への移送を申し立てた。原審は、審査を行った機構の徳島事務センターは行政機関ではないため「下級行政機関」に当たらないとして移送を認めたため、抗告人が許可抗告した。
あてはめ
日本年金機構は厚生労働大臣の監督下で年金事務を行う特殊法人であり、事務センターは機構法に基づき大臣の裁定処分に係る事務を補助する機関といえる。本件事務センターが「事案の処理そのものに実質的に関与した」といえるかは、同センターによる裁定請求の審査の方法・内容や、大臣への報告内容等を審理し、関与の態様や影響度を総合考慮して判断すべきである。原審は、行政組織法上の行政機関ではないという形式的理由のみで同項の該当性を否定しており、実質的関与の有無を審理していない点で審理不尽・法令解釈の誤りがある。
結論
原決定を破棄し、日本年金機構の事務センターが実質的に関与したといえるか否かを審理させるため、本件を高松高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
行政事務が特殊法人等に民間委託・外注されている現代的な行政実務において、行政事件訴訟法12条3項の管轄権を形式的に限定せず、原告の利便性や証拠調べの便宜という趣旨から実質的に解釈した点に意義がある。答案上は、組織の名称にとらわれず、実態として調査や意見具申を行っている箇所を特定し、総合考慮の枠組みで「下級行政機関」への該当性を論じる際に活用する。
事件番号: 平成14(行フ)10 / 裁判年月日: 平成15年3月14日 / 結論: 棄却
1 行政事件訴訟法12条3項にいう「下級行政機関」は,当該処分又は裁決を行った行政庁の指揮監督下にある行政機関に限られない。 2 総務庁恩給局長が,現地召集解除以後の残留期間も旧軍人普通恩給算定上恩給基礎在職年に算入すべきことを理由とする旧軍人普通恩給の改定請求を却下する旨の処分をした場合において,改定請求書等の提出を…
事件番号: 平成1(行ト)2 / 裁判年月日: 平成元年6月8日 / 結論: 棄却
行政庁を被告とする取消訴訟の管轄を定めた行政事件訴訟法一二条の規定は、憲法三二条に違反しない。
事件番号: 令和4(許)21 / 裁判年月日: 令和5年9月27日 / 結論: 破棄自判
民事訴訟の当事者双方が、適式な呼出しを受けながら、第1審の第1回口頭弁論期日及びその次の期日である第2回口頭弁論期日に連続して出頭しなかった場合において、当該訴訟の原告が、拘置所に収容されている死刑確定者であり、上記第2回口頭弁論期日に至るまで訴訟代理人を選任する具体的な見込みを有していたともうかがわれないことからすれ…
事件番号: 平成23(許)4 / 裁判年月日: 平成23年5月18日 / 結論: 破棄自判
民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。