1 行政事件訴訟法12条3項にいう「下級行政機関」は,当該処分又は裁決を行った行政庁の指揮監督下にある行政機関に限られない。 2 総務庁恩給局長が,現地召集解除以後の残留期間も旧軍人普通恩給算定上恩給基礎在職年に算入すべきことを理由とする旧軍人普通恩給の改定請求を却下する旨の処分をした場合において,改定請求書等の提出を受けた京都府の担当者が,請求者の履歴の審査をし,厚生省から示されていた処理方針に従い,上記残留期間は恩給基礎在職年に算入されないとの実質的な判断をして,請求者の軍人退職年月日を現地召集解除の日とする履歴書を作成し,上記の経過を記載した意見書を添えて上記局長に送付し,これに基づいて上記処分がされたものとみることができるなど判示の事情の下においては,京都府知事は,上記処分に関し,行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当する。
1 行政事件訴訟法12条3項にいう「下級行政機関」の意義 2 総務庁恩給局長がした旧軍人普通恩給の改定請求を却下する旨の処分に関し知事が行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当するとされた事例
行政事件訴訟法12条3項,恩給法(平成11年法律第160号による改正前のもの)12条,恩給法(平成11年法律第160号による改正前のもの)18条の2,恩給給与規則1条,恩給給与規則2条1項,恩給給与規則22条1項,恩給給与細則(平成12年総理府令第90号による改正前のもの)2条ただし書,地方自治法附則10条1項
判旨
行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」とは、処分等に関し事案の処理そのものに実質的に関与した行政機関を指し、処分庁の指揮監督下にある機関に限られない。都道府県知事が旧軍人恩給の改定請求に対し、身上資料との照合、実質的な判断、履歴書の作成、意見書の送付を行った場合、同機関に該当し、当該地を管轄する裁判所に管轄が認められる。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」の意義、および処分庁の直接の指揮監督下にない都道府県知事がこれに該当するか。
規範
行政事件訴訟法12条3項の「事案の処理に当たった下級行政機関」とは、当該処分等に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。また、この下級行政機関は、当該処分等を行った行政庁の指揮監督下にある行政機関に限られない。
事件番号: 平成12(行フ)2 / 裁判年月日: 平成13年2月27日 / 結論: 棄却
1 行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たつた下級行政機関」とは,当該処分又は裁決に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。 2 国民年金法による障害基礎年金と地方公務員等共済組合法による退職共済年金の併給を受けていた者が,和歌山県知事の補助機関である和歌山東社会保険事務所の担当者に対し,…
重要事実
旧陸軍軍人であった相手方が、山西省残留期間の在職年参入を求めて総務庁恩給局長に恩給改定請求を行った。京都府(保健福祉部)の担当者は、法令及び厚生省の通知に基づき、資料照合の上で「残留期間は通算されない」との実質的な判断を行い、退職年月日を現地召集解除日とする履歴書を浄書・作成した。さらに、同府は証明書及び意見書を添えて裁定庁に進達し、恩給局長は専らこの調査結果及び意見に基づいて却下処分(本件処分)を行った。相手方は京都地裁に提訴したが、国側が東京地裁への移送を申し立てた。
あてはめ
本件では、改定請求の可否が残留期間の軍務該当性に係るところ、京都府の担当者は履歴書原本との照合審査を行い、通知に従い請求は認められないとの実質的判断を下している。その上で、特定の退職年月日を記載した履歴書の作成や証明書の添付、経緯を記した意見書の送付を行っている。本件処分は、専らこれら京都府による調査結果や意見に基づいてなされたものといえる。したがって、京都府知事は本件処分の事案処理に実質的に関与したといえ、処分庁(恩給局長)の指揮監督下にあるか否かを問わず、同項の「下級行政機関」に該当すると評価される。
結論
京都府知事は「事案の処理に当たった下級行政機関」に該当するため、京都地方裁判所にも管轄権が認められ、移送申立てを却下した原決定は正当である。
実務上の射程
管轄の特例に関する重要判例である。処分庁が中央官庁であっても、地方自治体等が法定受託事務等として実質的な審査や調査を担っている場合には、原告の負担軽減という法旨趣から、当該自治体の所在地での提訴が可能となる。答案上は、当該機関が処分の判断の基礎となる調査・判断をどの程度主導したかという「実質的な関与」の有無を、事実認定から丁寧に拾う必要がある。
事件番号: 平成26(行フ)2 / 裁判年月日: 平成26年9月25日 / 結論: 破棄差戻
1 処分行政庁を補助して処分に関わる事務を行った組織は,それが行政組織法上の行政機関ではなく,法令に基づき処分行政庁の監督の下で所定の事務を行う特殊法人等又はその下部組織であっても,法令に基づき当該特殊法人等が委任又は委託を受けた当該処分に関わる事務につき処分行政庁を補助してこれを行う機関であるといえる場合において,当…
事件番号: 平成20(許)21 / 裁判年月日: 平成20年7月18日 / 結論: 破棄自判
地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合において,同申立てを却下する旨の判断は,民訴法16条2項の規定の趣旨にかんがみ,広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点からされるべきであり,地方裁判…
事件番号: 平成15(許)44 / 裁判年月日: 平成16年4月8日 / 結論: 破棄差戻
不正競争防止法3条1項に基づく不正競争による侵害の差止めを求める訴え及び差止請求権の不存在確認を求める訴えは,いずれも民訴法5条9号所定の訴えに該当する。
事件番号: 平成23(許)4 / 裁判年月日: 平成23年5月18日 / 結論: 破棄自判
民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。