民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。
民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟につき同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されるか
民訴法7条,民訴法9条,民訴法16条1項,民訴法38条後段
判旨
民事訴訟法38条後段の共同訴訟であって、いずれの被告に係る請求についても受訴裁判所が土地管轄権を有している場合には、同法7条但書により同法9条の適用が排除されることはなく、合算した訴訟の目的の価額により事物管轄を決定すべきである。
問題の所在(論点)
民事訴訟法38条後段の共同訴訟において、全ての請求につき受訴裁判所に土地管轄権が認められる場合、同法7条但書により同法9条の合算規定の適用が排除され、事物管轄が個別に算定されるか。
規範
1. 民事訴訟法7条は土地管轄について規定するものであり、事物管轄について規定するものではない。 2. 同条但書の趣旨は、関連裁判籍(土地管轄)を認めることによる被告の不利益(遠隔地での応訴)への配慮にある。 3. 事物管轄において、簡易裁判所ではなく当該地裁で審理を受けることによる不利益は、上記土地管轄における不利益と同等の配慮を要するとはいえない。 4. したがって、被告全員に対し土地管轄権を有する裁判所へ併合提起された38条後段の共同訴訟については、同法9条1項本文を適用し、各請求の価額を合算して事物管轄を判断する。
重要事実
1. 抗告人(原告)は、相手方(被告)を含む貸金業者3社に対し、過払金返還請求訴訟を、抗告人の住所地を管轄する地裁支部(土地管轄権あり)に併合して提起した。 2. 各被告に対する個別の請求額は140万円を超えないが、これらを合算すると140万円を超える。 3. 相手方は、本件が民訴法38条後段の共同訴訟に当たることを自認しつつ、事物管轄は個別の請求額で決まる(合算されない)として、簡易裁判所への移送を申し立てた。
事件番号: 平成23(許)13 / 裁判年月日: 平成23年5月30日 / 結論: 破棄自判
民訴法38条後段の要件を満たす共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない。
あてはめ
1. 本件は法38条後段の共同訴訟であるが、いずれの被告に対しても名古屋地裁(一宮支部)は土地管轄権を有している。 2. この場合、土地管轄に関する特則である法7条但書を適用して事物管轄の合算(法9条)を否定すべき理由はなく、法9条1項本文の原則通り、合算した額をもって訴訟の目的の価額とすべきである。 3. 本件訴訟の合算額は140万円を超えており、地裁の事物管轄に属すると評価される。 4. したがって、相手方の移送申立てには理由がない。
結論
法7条但書の適用はなく、法9条により合算された額が140万円を超えるため、地方裁判所に事物管轄が認められる。よって、移送申立ては却下されるべきである。
実務上の射程
同一種類の事実上または法律上の原因に基づく共同訴訟(38条後段)において、被告全員に共通の土地管轄(義務履行地等)がある場合に、訴額を合算して地裁へ提訴できるかを判断する際の指針となる。
事件番号: 平成20(許)21 / 裁判年月日: 平成20年7月18日 / 結論: 破棄自判
地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合において,同申立てを却下する旨の判断は,民訴法16条2項の規定の趣旨にかんがみ,広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点からされるべきであり,地方裁判…
事件番号: 平成30(許)10 / 裁判年月日: 平成31年2月12日 / 結論: 棄却
離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求めている場合において,上記被告が上記第三者を相手方として提起した上記不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟は,人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たる…
事件番号: 平成12(行フ)2 / 裁判年月日: 平成13年2月27日 / 結論: 棄却
1 行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たつた下級行政機関」とは,当該処分又は裁決に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。 2 国民年金法による障害基礎年金と地方公務員等共済組合法による退職共済年金の併給を受けていた者が,和歌山県知事の補助機関である和歌山東社会保険事務所の担当者に対し,…
事件番号: 平成1(行ト)2 / 裁判年月日: 平成元年6月8日 / 結論: 棄却
行政庁を被告とする取消訴訟の管轄を定めた行政事件訴訟法一二条の規定は、憲法三二条に違反しない。