行政庁を被告とする取消訴訟の管轄を定めた行政事件訴訟法一二条の規定は、憲法三二条に違反しない。
行政庁を被告とする取消訴訟の管轄を定めた行政事件訴訟法一二条の規定と憲法三二条
憲法32条,行政事件訴訟法12条
判旨
裁判を受ける権利を保障する憲法32条は、裁判所の組織、権限、審級等の具体的決定を立法政策に委ねており、行政事件訴訟法12条の管轄規定は同条に違反しない。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法12条の定める裁判管轄の規定、およびそれに基づく移送決定が、憲法32条の保障する「裁判を受ける権利」を侵害し、違憲とならないか。また、同13条および25条に違反しないか。
規範
憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利を有することを規定するが、いかなる裁判所において裁判を受けるべきかという裁判所の組織、権限、審級等については、すべて法律において諸般の事情を考慮して決定すべき立法政策の問題であり、憲法による制限はないと解される。
重要事実
行政庁を被告とする取消訴訟の提起において、行政事件訴訟法12条の規定に基づき、所定の管轄を有する東京地方裁判所への移送決定がなされた。これに対し、抗告人は当該管轄規定および移送決定が、裁判を受ける権利(憲法32条)、幸福追求権(13条)、および生存権(25条)を侵害するものであるとして争った。
事件番号: 昭和58(ク)292 / 裁判年月日: 昭和59年1月30日 / 結論: 棄却
離婚の訴えの管轄を定めた人事訴訟手続法一条一項の規定は、憲法三二条に違反しない。
あてはめ
裁判管轄の決定は立法府の裁量に属する事項である。本件において、行政事件訴訟法12条の管轄規定に従って東京地方裁判所へ移送することは、立法府が諸般の事情を考慮して決定した合理的な立法政策の範囲内であるといえる。したがって、特定の裁判所での審理を強制するものではなく、裁判を受ける機会自体を奪うものではないため、憲法32条に違反しない。また、幸福追求権や生存権の侵害をいう主張も、結局は立法政策の当否を争うものにすぎず、憲法上の権利を侵害するとはいえない。
結論
行政事件訴訟法12条およびそれに基づく移送決定は、憲法32条、13条、25条のいずれにも違反しない。
実務上の射程
裁判所の土地管轄や専属管轄の規定に関する違憲主張を排斥する際のリーディングケース。民事・行政訴訟における管轄の合憲性を論じる際、「立法政策の問題」として裁量を広く認める構成をとる場合に引用する。
事件番号: 平成12(行フ)2 / 裁判年月日: 平成13年2月27日 / 結論: 棄却
1 行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たつた下級行政機関」とは,当該処分又は裁決に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。 2 国民年金法による障害基礎年金と地方公務員等共済組合法による退職共済年金の併給を受けていた者が,和歌山県知事の補助機関である和歌山東社会保険事務所の担当者に対し,…
事件番号: 平成26(行フ)2 / 裁判年月日: 平成26年9月25日 / 結論: 破棄差戻
1 処分行政庁を補助して処分に関わる事務を行った組織は,それが行政組織法上の行政機関ではなく,法令に基づき処分行政庁の監督の下で所定の事務を行う特殊法人等又はその下部組織であっても,法令に基づき当該特殊法人等が委任又は委託を受けた当該処分に関わる事務につき処分行政庁を補助してこれを行う機関であるといえる場合において,当…
事件番号: 昭和51(行ト)5 / 裁判年月日: 昭和52年3月10日 / 結論: 却下
外国人が退去強制令書によりその本国等に強制送還されても、日本において裁判を受ける権利を否定されることにはならない。
事件番号: 昭和35(し)43 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は、法律に定められた裁判所によって裁判を受ける権利を保障するものであり、特定の具体的裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。したがって、裁判の公平を維持し難いおそれがある場合に管轄を移転させることは、憲法31条、32条、37条1項、76条3項に反しない。 第1 事案の概要:被…