離婚の訴えの管轄を定めた人事訴訟手続法一条一項の規定は、憲法三二条に違反しない。
離婚の訴えの管轄を定めた人事訴訟手続法一条一項の規定と憲法三二条
憲法32条,人事訴訟手続法1条1項
判旨
裁判を受ける権利(憲法32条)における裁判所の組織、権限、審級等は立法政策の問題であり、離婚事件の管轄を定めた規定は同条に違反しない。また、当該規定は男女間で差別を設けておらず、居住・移転の自由を制限するものでもないため、憲法14条、22条、24条にも違反しない。
問題の所在(論点)
離婚事件の管轄を夫の住所地等に基づき定める規定が、裁判を受ける権利を侵害し、あるいは法の下の平等や居住・移転の自由、家族生活における個人の尊厳を害するものとして憲法に違反するか。
規範
憲法32条は裁判を受ける権利を保障するが、いかなる裁判所において裁判を受けるべきかという裁判所の組織、権限、審級等については、諸般の事情を考慮して決定すべき立法政策の問題であり、憲法の制限するところではない。また、法の下の平等(14条1項)については形式的・実質的差別の有無を、居住・移転の自由(22条)については制約の有無を検討し、それらが認められない場合には憲法違反とはならない。
重要事実
離婚事件の管轄を定めた当時の人事訴訟手続法1条1項の規定に関し、抗告人が当該規定は憲法32条(裁判を受ける権利)、14条1項(平等原則)、22条(居住・移転の自由)、24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反するものであると主張して争った事案である。
事件番号: 平成1(行ト)2 / 裁判年月日: 平成元年6月8日 / 結論: 棄却
行政庁を被告とする取消訴訟の管轄を定めた行政事件訴訟法一二条の規定は、憲法三二条に違反しない。
あてはめ
まず、裁判所の管轄の定めは立法府の裁量に属する事項であり、裁判を受ける権利を侵害するものではない。次に、本件規定は離婚事件の管轄に関し、夫と妻との間で何ら差別を設けていない。さらに、当該規定が直接的に妻の居住、移転の自由に対して制限を加えているという事実も認められない。したがって、差別や自由の制限を前提とする各違憲主張は、その前提を欠くものと言える。
結論
人事訴訟手続法1条1項の規定は、憲法32条、14条1項、22条、24条2項に違反しない。
実務上の射程
裁判を受ける権利が手続的保障にとどまり、制度設計の詳細(管轄や審級)が立法府の広い裁量に委ねられていることを示す射程を持つ。答案上は、管轄の不備を理由に裁判を受ける権利の侵害を主張する場面において、立法政策の問題として裁量を認める際の根拠として活用できる。ただし、現代の国際裁判管轄や人事訴訟法改正後の議論では、個別具体的な事情に応じた訴訟アクセスの確保が重視される点に留意が必要である。
事件番号: 平成30(許)10 / 裁判年月日: 平成31年2月12日 / 結論: 棄却
離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求めている場合において,上記被告が上記第三者を相手方として提起した上記不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟は,人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たる…
事件番号: 昭和48(ク)263 / 裁判年月日: 昭和49年2月8日 / 結論: 棄却
民訴法三九条は憲法三二条、一四条に違反しない。
事件番号: 昭和54(ク)430 / 裁判年月日: 昭和55年2月7日 / 結論: 棄却
特別家事審判規則二一条の審判に対し即時抗告による不服申立の方法を認めるかどうかは、立法政策の問題に帰着し、家事審覇法一四条及び右規則が憲法三二条に違反するかどうかの問題を生じない。
事件番号: 昭和35(し)43 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は、法律に定められた裁判所によって裁判を受ける権利を保障するものであり、特定の具体的裁判所で裁判を受ける権利までを保障するものではない。したがって、裁判の公平を維持し難いおそれがある場合に管轄を移転させることは、憲法31条、32条、37条1項、76条3項に反しない。 第1 事案の概要:被…