嫡出否認の訴えについて出訴期間を定めた民法777条の規定は,憲法13条,14条1項に違反しない。
嫡出否認の訴えについて出訴期間を定めた民法777条と憲法13条,14条1項
判旨
民法772条により嫡出の推定を受ける子に対する嫡出否認の訴えにつき、同法777条が1年の出訴期間を定めたことは、身分関係の法的安定を保持する上で合理性を有し、憲法13条及び14条に違反しない。
問題の所在(論点)
民法777条が、嫡出否認の訴えについて1年という短い出訴期間を制限していることが、憲法13条の保障する幸福追求権や憲法14条の法の下の平等に反し違憲といえるか。
規範
嫡出推定を受ける子について夫が嫡出性を否認するための訴訟手続の在り方は、広範な立法政策に属する事項である。嫡出否認の訴えに1年の出訴期間を設けることは、早期に父子関係を確定させ、身分関係の法的安定を保持するという目的において合理的な制限であり、憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)や憲法14条(法の下の平等)に照らして合憲である。
重要事実
上告人は、民法772条により嫡出の推定を受ける子について、民法777条が定める1年の出訴期間(夫が子の出生を知った時から1年以内)を過ぎた後に嫡出否認を求めた。上告人は、当該出訴期間の制限が厳しすぎ、憲法13条及び14条等に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
民法777条の規定は、子の身分関係が長期間不安定な状態に置かれることを防ぎ、法的安定性を図るという重要な立法目的に基づくものである。出訴期間の長さや手続の設計は立法府の裁量に委ねられており、昭和30年の大法廷判決の趣旨に照らしても、1年という期間制限が著しく不合理で憲法の理念に反するとはいえない。したがって、本件において同条を適用し、期間経過後の訴えを認めないことは憲法違反にあたらない。
事件番号: 平成25(受)233 / 裁判年月日: 平成26年7月17日 / 結論: 破棄自判
夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,子が現時点において妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
結論
民法777条は憲法13条、14条に違反せず合憲であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
嫡出推定が及ぶ嫡出子について、嫡出否認の訴えによらずに親子関係不存在確認の訴えを提起することは、原則として許されない(排他的制限)。本判決は、この制限の根幹である出訴期間の合憲性を改めて確認したものであり、実務上、推定が及ぶ限りはDNA鑑定結果等の客観的事実があっても、1年の期間経過後は父子関係を否定できないという結論を導く際の根拠となる。
事件番号: 昭和54(オ)1331 / 裁判年月日: 昭和55年3月27日 / 結論: 棄却
嫡出の推定を受ける子につき夫がその嫡出であることを否認するためには嫡出否認の訴によるべきものとし、かつ、右訴につき出訴期間を定めた民法の規定は、憲法一三条、一四条一項に違反しない(昭和二八年(オ)第三八九号同三〇年七月二〇日大法廷判決・民集九巻九号一一二二頁、昭和五四年(オ)第一四九号同五四年六月二一日第一小法廷判決・…
事件番号: 平成24(受)1402 / 裁判年月日: 平成26年7月17日 / 結論: 破棄自判
夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
事件番号: 平成8(オ)380 / 裁判年月日: 平成12年3月14日 / 結論: 破棄自判
夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情が存在することの一事をもって、夫が、民法七七二条により嫡出の推定を受ける子に対して、親子関係不存在確認の訴えを提起することは許されない。