嫡出の推定を受ける子につき夫がその嫡出であることを否認するためには嫡出否認の訴によるべきものとし、かつ、右訴につき出訴期間を定めた民法の規定は、憲法一三条、一四条一項に違反しない(昭和二八年(オ)第三八九号同三〇年七月二〇日大法廷判決・民集九巻九号一一二二頁、昭和五四年(オ)第一四九号同五四年六月二一日第一小法廷判決・裁判集民事第一二七号一一七頁)。
嫡出の否認につき訴によるべきこと及び右訴について出訴期間を定めた民法の規定と憲法一三条、一四条一項
民法774条,民法775条,民法777条,憲法13条,憲法14条1項
判旨
嫡出推定を受ける子に対する嫡出否認の訴えにつき、1年の出訴期間を定めた民法旧777条の規定は、身分関係の法的安定を保持する目的として合理性があり、憲法13条及び14条に違反しない。
問題の所在(論点)
民法772条の嫡出推定を受ける子について、嫡出否認の訴え以外の方法による親子関係の否定を認めず、かつ1年の出訴期間を定めた民法の規定が、憲法13条及び14条に反し違憲ではないか。
規範
嫡出推定を受ける子の嫡出否認に関する訴訟手続の設計は立法政策の範疇に属する。身分関係の早期確定と法的安定性の保持を目的として、提訴権者を夫に限定し、かつ短期の出訴期間(1年)を設けることは、その目的達成のために十分な合理性を有する制度である。
重要事実
上告人は、民法772条により嫡出の推定を受ける子について、夫がその嫡出性を否定するための手続的制約(民法旧774条、775条、777条)が憲法13条(個人の尊重)や憲法14条(法の下の平等)に違反するとして争った。
事件番号: 平成26(オ)226 / 裁判年月日: 平成26年7月17日 / 結論: 棄却
嫡出否認の訴えについて出訴期間を定めた民法777条の規定は,憲法13条,14条1項に違反しない。
あてはめ
民法が嫡出否認の訴えに厳格な出訴期間を設けているのは、真実の血縁関係よりも法的父子関係を早期に確定させ、家庭の平和と子の福祉を保護するためである。このような身分関係の法的安定性は公の利益に資するものであり、1年という期間制限もその目的に照らし合理的な範囲内といえる。したがって、個人の尊厳を害したり、不合理な差別を設けるものとは評価できない。
結論
民法旧777条等の規定は憲法13条、14条に違反しない。
実務上の射程
本判決は嫡出推定が及ぶ「推定される嫡出子」に関する原則的な判断である。もっとも、後に形成された「推定の及ばない嫡出子」の法理や、民法改正(令和4年改正)による出訴期間の延長(3年)および提訴権者の拡大(子・母)を踏まえた検討が必要であるが、立法裁量を広く認める基本的な枠組みとして現在も参照される。
事件番号: 昭和54(オ)149 / 裁判年月日: 昭和54年6月21日 / 結論: 棄却
法律上の父子関係は認知によつてはじめて発生するものと定めることは憲法一三条にも一四条一項にも違反しない。
事件番号: 平成25(受)233 / 裁判年月日: 平成26年7月17日 / 結論: 破棄自判
夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,子が現時点において妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情があっても,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
事件番号: 平成8(オ)380 / 裁判年月日: 平成12年3月14日 / 結論: 破棄自判
夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情が存在することの一事をもって、夫が、民法七七二条により嫡出の推定を受ける子に対して、親子関係不存在確認の訴えを提起することは許されない。
事件番号: 昭和35(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。