法律上の父子関係は認知によつてはじめて発生するものと定めることは憲法一三条にも一四条一項にも違反しない。
法律上の父子関係は認知によつてはじめて発生するものと定めることと憲法一三条及び一四条一項
民法779条,憲法13条,憲法14条1項
判旨
非嫡出子と父との間の法律上の父子関係は、認知によって初めて発生すると定めた民法の規定は、身分関係の法的安定性を保持する目的から合理性があり、憲法13条および14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
非嫡出子と父との間の父子関係が認知によって初めて発生すると定める民法の制度が、憲法13条および14条1項に違反するか。
規範
嫡出でない子と父との間の法律上の父子関係を成立させるための制度設計は、立法的裁量に属する事項である。身分関係の法的安定性を保持するという目的において十分な合理性があり、かつ特定の個人に対して不当な差別を生じさせない限り、当該制度は憲法13条(個人の尊重)および14条1項(法の下の平等)に違反しない。
重要事実
上告人(非嫡出子)が、認知を媒介とせずに父との間の法律上の父子関係が成立しないとする現行民法の制度は、憲法13条および14条1項に反すると主張して争った事案である。原審は民法の規定を正当として上告を棄却したため、上告人が最高裁に判断を求めた。
あてはめ
民法が認知を父子関係発生の要件としているのは、身分関係の法的安定を保持するためであり、立法目的として十分な合理性が認められる。また、この規定はすべての非嫡出子に対して一律に適用されるものであり、特定の非嫡出子を差別的に取り扱うものではない。したがって、立法府の裁量の範囲内にあるものといえる。
結論
認知を父子関係の発生要件とする民法の規定は、憲法13条および14条1項に違反しない。
実務上の射程
非嫡出子の父子関係の成立に関する立法的裁量を広く認めた判例である。憲法14条に関する答案作成時には、身分関係の法的安定性という目的の合理性を強調する文脈で活用できる。ただし、その後の国籍法違憲判決(最大判平20.6.4)等、非嫡出子の差別に関する後続判例の動向には注意を要する。
事件番号: 平成1(オ)772 / 裁判年月日: 平成2年7月19日 / 結論: 棄却
認知されていない非嫡出子は、父との間の親子関係の存在確認の訴えを提起することができない。
事件番号: 昭和35(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。
事件番号: 平成24(受)1402 / 裁判年月日: 平成26年7月17日 / 結論: 破棄自判
夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても,親子関係不存在確認の訴えをもって父子関係の存否を争うことはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)