子の血縁上の父であると主張する甲が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起したところ、右訴えの帰すうが定まる前に右事情を知る審判官によって子を第三者の特別養子とする審判がされ、これが確定したが、甲について子を虐待し又は悪意で遺棄したなどの民法八一七条の六ただし書に該当することが明白であるとすべき事由が存在するとはいえないという事情の下においては、訴えの利益を否定した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。
子の血縁上の父であると主張する者が提起した戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの係属中に子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合につき訴えの利益を否定した原審の判断に違法があるとされた事例
人事訴訟手続法第2章親子関係事件ニ関スル手続,民訴法第2編第1章訴え,民法817条の2,民法817条の6,民法817条の9,家事審判法9条1項甲類8号の2
判旨
特別養子縁組の審判確定後であっても、準再審の事由がないことが明白でない限り、血縁上の父が戸籍上の父子間の親子関係不存在確認を求める訴えの利益は失われない。民法817条の6ただし書の事由(同意不要事由)についても、それが明白でない限り訴えの利益を否定すべきではない。
問題の所在(論点)
特別養子縁組の審判が確定した場合において、血縁上の父が提起した親子関係不存在確認の訴えの利益が認められるための要件、および民法817条の6ただし書該当性の判断の在り方。
規範
1. 子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合、原則として血縁上の父による親子関係不存在確認の訴えの利益は消滅するが、当該審判に準再審の事由が認められるときは訴えの利益を失わない。 2. 準再審の事由があるか否かの判断において、民法817条の6ただし書(父母による養育が著しく困難又は不適当であること等)に該当することが明白でない限り、準再審の途を閉ざさないよう訴えの利益を認めるべきである。
重要事実
上告人は、Dと不倫関係にあり、Dと夫である被上告人B2の婚姻中に生まれた子B1の血縁上の父である。B1はB2の嫡出子として届け出られたが、Dはその後行方不明となり、B1は第三者夫妻に引き取られた。上告人は親子関係不存在確認の訴えを提起したが、その係属中に家庭裁判所はB1と第三者夫妻との特別養子縁組を認める審判をした。原審は、上告人に引き取られることがB1の利益を害し、民法817条の6ただし書に該当するとして、訴えの利益を否定した。
あてはめ
準再審の事由は本来、審判をした家庭裁判所の専属管轄であり、訴訟裁判所がこれを否定して訴えを却下すれば、血縁上の父は準再審の手続自体を閉ざされる。本件において、原審が挙げた「養親との生活の安定」や「血縁上の父による引取りがもたらす精神的混乱」という事情だけでは、上告人が子を虐待・遺棄したなどの民法817条の6ただし書に該当することが明白であるとまではいえない。したがって、準再審開始の可能性がある以上、訴えの利益を否定することはできない。
結論
民法817条の6ただし書に該当することが明白でない本件においては、訴えの利益は消滅しておらず、原判決を破棄し差し戻すべきである。
実務上の射程
特別養子縁組後の実父による争いにおいて、訴えの利益を維持するための「準再審の可能性」のハードルを低く設定した点に意義がある。答案上は、特別養子縁組確定後の訴えの利益の有無を論じる際、原則消滅・例外維持の枠組みとして本規範を用いる。
事件番号: 平成17(受)1708 / 裁判年月日: 平成18年7月7日 / 結論: 破棄差戻
戸籍上Xと亡夫との夫婦の嫡出子として記載されているYがXの実子ではない場合において,YとXとの間には,XがYに対して実親子関係不存在確認調停を申し立てるまでの約51年間にわたり実親子と同様の生活の実体があり,その間,XはYがXの実子であることを否定したことがないこと,判決をもって実親子関係の不存在が確定されるとYが軽視…
事件番号: 平成17(受)833 / 裁判年月日: 平成18年7月7日 / 結論: その他
戸籍上AB夫婦の嫡出子として記載されているYが同夫婦の実子ではない場合において,Yと同夫婦との間に約55年間にわたり実親子と同様の生活の実体があったこと,同夫婦の長女Xにおいて,Yが同夫婦の実子であることを否定し,実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,同夫婦の遺産を承継した二女Cが死亡しその相続が問題とな…