一 子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合には、原則として、子の血縁上の父が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの利益は消滅するが、右審判に準再審の事由があると認められるときは、右訴えの利益は失われない。 二 子の血縁上の父であると主張する甲が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起するなどしており、子を第三者の特別養子とする審判を担当する審判官も甲の上申を受けてそのことを知っていたにもかかわらず、右訴えの帰すうが定まる前に子を第三者の特別養子とする審判がされた場合において、甲が子の血縁上の父であるときは、甲について民法八一七条の六ただし書に該当する事由が認められるなどの特段の事情のない限り、右審判には、家事審判法七条、非訟事件手続法二五条、民訴法四二九条、四二〇条一項三号の準再審の事由がある。
一 子を第三者の特別養子とする審判の確定と子の血縁上の父が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの利益 二 子の血縁上の父であると主張する者が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起するなどしていたにもかかわらず右訴えの帰すうが定まる前に子を第三者の特別養子とする審判がされた場合における準再審の事由の有無
民法779条,民法817条の2,民法817条の9,民訴法第2編第1章訴,民訴法420条1項3号,民訴法429条,人事訴訟手続法第2章親子関係事件ニ関スル手続,家事審判法9条1項甲類8号の2
判旨
血縁上の父による嫡出否認等の訴えの利益は、子が特別養子となった場合でも、その審判に準再審事由が認められるときは失われない。血縁上の父が認知に向けた手続中であると知りながら、特段の事情なくされた特別養子縁組審判には、手続的正義に反する準再審事由がある。
問題の所在(論点)
子が第三者の特別養子となった場合、血縁上の父が提起した戸籍上の父子関係の不存在確認を求める訴えの利益は消滅するか。また、血縁上の父の認知に向けた権利行使を無視してされた特別養子縁組審判に準再審事由が認められるか。
規範
1.血縁上の父は、戸籍上の父と子との間の親子関係存否確認を求める訴えの利益を有するが、子が特別養子となった場合は原則として消滅する。ただし、当該審判に準再審事由が認められ、将来的に認知の可能性が残る場合は例外的に訴えの利益は失われない。2.血縁上の父が認知に向けた法的手段を執っていることを審判官が知りながら、民法817条の6ただし書の事由(父の同意不要事由)等の特段の事情がない限り、訴えの帰趨を待たずにされた特別養子縁組審判は、当事者に参与の機会を与えない適正手続違反として、準再審事由(民訴法420条1項3号類推)を構成する。
重要事実
上告人は、子が誕生した直後から自らが血縁上の父であると主張し、認知のための調停申立て、次いで親子関係不存在確認の訴えを提起していた。特別養子縁組の審理を担当した審判官も、上告人の上申を受けるなどしてこの事実を認識していた。しかし、審判官は本件訴えの帰趨を待たず、特段の事情の有無を審理しないまま、子を第三者の特別養子とする審判を確定させた。
あてはめ
上告人は認知に向けた調停や本件訴えを現に提起しており、審判官もその事実を把握していた。にもかかわらず、上告人が民法817条の6ただし書に該当する等の特段の事情を検討せずに審判を強行することは、上告人が主張する権利実現の道を閉ざすものであり、著しく手続的正義に反する。このような適正手続を欠いた審判には準再審事由が認められ得る。そうであれば、将来的に上告人が子を認知できる余地が残るため、本件訴えの利益は否定されない。
結論
特別養子縁組審判に準再審事由が認められる余地があるため、上告人の訴えの利益は失われない。原審の判断には法令解釈の誤りと審理不尽があるため、破棄し差し戻すべきである。
実務上の射程
血縁上の父による「親子関係不存在確認の訴え」において、被告側から特別養子縁組の成立を理由に却下申立てがなされた際の反論として用いる。審判官の認識や、父側の認知に向けた具体的アクション(調停・訴訟)の有無、及び同意不要事由の欠如を主張の骨子とする。
事件番号: 昭和55(オ)661 / 裁判年月日: 昭和56年6月16日 / 結論: 棄却
嫡出親子関係不存在確認の訴においては、父子関係と母子関係との各不存在を合一に確定する必要はない。
事件番号: 平成17(受)1708 / 裁判年月日: 平成18年7月7日 / 結論: 破棄差戻
戸籍上Xと亡夫との夫婦の嫡出子として記載されているYがXの実子ではない場合において,YとXとの間には,XがYに対して実親子関係不存在確認調停を申し立てるまでの約51年間にわたり実親子と同様の生活の実体があり,その間,XはYがXの実子であることを否定したことがないこと,判決をもって実親子関係の不存在が確定されるとYが軽視…
事件番号: 平成17(受)833 / 裁判年月日: 平成18年7月7日 / 結論: その他
戸籍上AB夫婦の嫡出子として記載されているYが同夫婦の実子ではない場合において,Yと同夫婦との間に約55年間にわたり実親子と同様の生活の実体があったこと,同夫婦の長女Xにおいて,Yが同夫婦の実子であることを否定し,実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,同夫婦の遺産を承継した二女Cが死亡しその相続が問題とな…