死刑の量刑が維持された事例(前橋スナックけん銃乱射殺人等事件)
判旨
暴力団組織による報復・制裁目的の組織的殺人等において、一般人3名を含む5名の生命を奪った首謀者の刑事責任は極めて重大であり、死刑の適用が是認される。
問題の所在(論点)
組織的殺人の首謀者であり実行行為に直接関与していない被告人に対し、一般人を含む5名が殺害された結果等の事情を鑑み、死刑を選択することが妥当か。特に、実行犯らと比較した責任の程度と死刑適用の可否が問題となる。
規範
死刑の選択に当たっては、永山判決(最判昭58.7.8)の判断枠組みを維持しつつ、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の冷酷性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考慮し、罪責が誠に重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からもやむを得ない場合に認められる。
重要事実
暴力団組長の被告人は、対立組織への報復や不従順な組員への制裁を目的とし、配下組員らと共謀。①スナックでボディーガード及び一般客3名を射殺し元幹部らに重傷を負わせた事案、②病院のICUで組員1名を射殺した事案等の首謀者として、計5名を殺害し、複数名に重傷を負わせた。被告人は実行行為には関与していないが、上命下服の関係を利用して具体的指示を与えていた。
あてはめ
各犯行は組織的・計画的で反社会性が甚だしく、一般人を巻き込む危険を顧みない冷酷・残虐な態様である。一般人3名を含む5名の生命を奪った結果は誠に重大であり、遺族の処罰感情も峻烈である。被告人は実行犯ではないが、首謀者として具体的指示を与えた責任は実行犯と同等以上である。11犯の前科や反省の欠如を考慮すると、一部和解金支払等の有利な事情を考慮しても、刑事責任は極めて重大といえる。
結論
事件番号: 平成18(あ)809 / 裁判年月日: 平成21年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団の抗争において、配下の組員に拳銃等を携行させて敵対組織の幹部らを襲撃し、重傷を負わせた行為は、刑法110条1項の放火罪等の類推適用を要するまでもなく、組織的かつ計画的な犯行としてその刑事責任は極めて重い。特に、指示を出した首謀者については、実行犯と同等以上の重い責任を免れず、死刑または無期懲…
被告人を死刑に処した第一審判決を維持した原判断は相当であり、死刑の適用は是認される。
実務上の射程
共謀共同正犯における首謀者の責任を重視。殺害人数が複数(本件では5名)で、かつ一般市民を巻き込んだ組織的犯罪の場合、実行行為を担当していなくても死刑が強く肯定されることを示す。
事件番号: 平成21(あ)68 / 裁判年月日: 平成24年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団組長による3件の殺人等につき、組織的な犯行であること、3名の生命を奪った結果の重大性、首謀者としての責任の重さを重視し、被害者遺族への被害弁済等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:暴力団組長である被告人は、配下組員と共謀し、(1)保険金詐欺の口封じ、…
事件番号: 平成21(あ)1640 / 裁判年月日: 平成25年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が検討される事案において、組織的背景に基づく犯行の性質、殺意の強固さ、結果の重大性、地域社会への影響、及び被告人の役割を総合的に考慮すれば、たとえ遺族の一部に宥恕の意思があり、被告人が暴力団を脱退したなどの情状を考慮しても、死刑に処した判断は是認される。 第1 事案の概要:暴力団員である…
事件番号: 平成18(あ)2156 / 裁判年月日: 平成21年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団間の抗争に端を発し、一般客のいるレストランで拳銃を用いて2名を殺害した事案において、犯行の計画性、残忍性、一般市民を巻き込む危険性の高さ等の諸事情を考慮し、死刑判決を維持した。 第1 事案の概要:暴力団構成員である被告人は、他団体からの高額な金銭要求に対し、組織の面目を保つため相手方の殺害を…
事件番号: 平成17(あ)1101 / 裁判年月日: 平成19年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、永山基準(最高裁昭和58年判決)に基づき、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。暴力団組織を利用した計画的・組織的な殺害行為であり、被告人が主導的な立場で冷酷かつ非情に実行を命じた本件にお…