死刑の量刑が維持された事例(前橋スナックけん銃乱射殺人等事件)
判旨
暴力団の抗争において、配下の組員に拳銃等を携行させて敵対組織の幹部らを襲撃し、重傷を負わせた行為は、刑法110条1項の放火罪等の類推適用を要するまでもなく、組織的かつ計画的な犯行としてその刑事責任は極めて重い。特に、指示を出した首謀者については、実行犯と同等以上の重い責任を免れず、死刑または無期懲役の選択肢を含め、厳重な処罰を科すのが相当である。
問題の所在(論点)
暴力団抗争における襲撃事件の首謀者に対し、直接の殺害行為に及んでいない場合であっても、計画性や組織性を根拠として無期懲役を選択することは許されるか。また、住宅街での火炎瓶使用等の態様をどのように評価すべきか。
規範
組織的な暴力団抗争における首謀者の刑事責任については、犯行の計画性、武器の性質、被害の程度、および組織内での立場を総合的に考慮して判断する。特に、対立組織に対する組織的な攻撃として、配下組員に具体的指示を与え、公道や住宅街等で無差別な危険を伴う攻撃を行わせた場合、結果として生じた死傷の程度のみならず、社会に与えた不安や組織的背景を重視して、極めて重い刑責を課すべきである。
重要事実
被告人は暴力団幹部の立場にあり、配下の組員数名に対し、対立する暴力団の組長らを襲撃するよう指示した。実行犯らは、指示に基づき、火炎瓶や拳銃を準備した上で、国外への逃走計画まで策定して組織的に行動した。実際の襲撃では、住宅街において対立組織のボディーガードらに対し、火炎瓶の投擲や拳銃による射撃を行い、複数の者に重傷を負わせた。実行犯のうち1名は非暴力団員であったが、被告人の配下としてその指揮命令系統に組み込まれていた。
あてはめ
本件では、被告人は組長という立場から配下へ襲撃を指示しており、犯行の「動機」において組織防衛や勢力拡大という暴力団特有の論理が認められる。また、火炎瓶や拳銃という殺傷能力の高い武器を用い、一般市民が居住する「住宅街」で犯行に及んだ点は、公共の平穏を著しく害する「無差別な危険性」を内包しており、情状は極めて悪い。さらに、国外逃亡の準備を含めた「高度な計画性」は、偶発的な暴行とは一線を画す。実行犯が重傷を負わせたという結果以上に、首謀者としてこれらの危険な犯行を差配した「役割の重要性」は極めて大きいといえる。
事件番号: 平成21(あ)2058 / 裁判年月日: 平成26年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団組織による報復・制裁目的の組織的殺人等において、一般人3名を含む5名の生命を奪った首謀者の刑事責任は極めて重大であり、死刑の適用が是認される。 第1 事案の概要:暴力団組長の被告人は、対立組織への報復や不従順な組員への制裁を目的とし、配下組員らと共謀。①スナックでボディーガード及び一般客3名…
結論
被告人の刑事責任は極めて重く、一審の無期懲役判決を維持し、被告人の上告を棄却するのが相当である。
実務上の射程
本判決は、暴力団の首謀者の責任を、単なる共犯理論にとどまらず、組織性・計画性・公共への危険性という観点から加重評価する実務上の指針を示したものである。答案作成においては、共同正犯の成否だけでなく、量刑上の評価要素として「組織的背景」を具体的事実から抽出する際に参照すべきである。
事件番号: 平成18(あ)1124 / 裁判年月日: 平成21年10月19日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】暴力団の抗争において、配下組員が対立組織の会長を殺害した際、上位組織の組長が殺害計画を事前に認識し、これを当然のこととして容認(共謀)していたと推認される場合には、当該組長は殺人罪の共同正犯としての責任を免れない。 第1 事案の概要:1.対立組織との間で激しい抗争状態にあり、最高幹部が襲撃される等…
事件番号: 平成17(あ)1101 / 裁判年月日: 平成19年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、永山基準(最高裁昭和58年判決)に基づき、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。暴力団組織を利用した計画的・組織的な殺害行為であり、被告人が主導的な立場で冷酷かつ非情に実行を命じた本件にお…
事件番号: 昭和38(あ)2921 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立には、共謀者間で犯罪の具体的計画につき意思の合致があることを要するが、包括的な命令であっても、それに基づき順次共謀が遂げられれば共謀の成立を妨げない。また、共謀の一部に「殺傷もやむを得ない」という未必的な認識が含まれる場合であっても、殺人の共謀として認めることができる。 第1 事…
事件番号: 平成21(あ)68 / 裁判年月日: 平成24年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団組長による3件の殺人等につき、組織的な犯行であること、3名の生命を奪った結果の重大性、首謀者としての責任の重さを重視し、被害者遺族への被害弁済等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:暴力団組長である被告人は、配下組員と共謀し、(1)保険金詐欺の口封じ、…