ゴルフ倶楽部会員において,同伴者が暴力団関係者であることを申告せずにそのゴルフ場の施設利用を申し込み,同人に施設を利用させた行為は,入会の際に暴力団関係者を同伴しない旨誓約していたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,刑法246条2項の詐欺罪に当たる。 (意見がある。)
入会の際に暴力団関係者を同伴しない旨誓約したゴルフ倶楽部会員において,同伴者が暴力団関係者であることを申告せずに同人に関するゴルフ場の施設利用を申し込み,施設を利用させた行為が,刑法246条2項の詐欺罪に当たるとされた事例
刑法246条2項
判旨
暴力団員の入場及び施設利用を禁止しているゴルフ場において、暴力団員であることを秘して施設利用を申し込む行為は、利用客が暴力団員か否かが施設利用の許否の判断の基礎となる重要な事項である以上、詐欺罪にいう「人を欺く行為」に該当する。
問題の所在(論点)
暴力団員であることを秘してゴルフ場の施設利用を申し込む行為が、刑法246条2項の詐欺罪における「人を欺く行為」に該当するか。特に、明示的な虚偽の申立てがない場合に欺罔行為といえるかが問題となる。
規範
刑法246条2項の「人を欺く行為」とは、財産的価値を有する利益の移転に向けられた、相手方が処分判断の基礎とする重要な事項を偽る行為をいう。ゴルフ場が経営上の観点から暴力団員の利用を禁止している場合、利用客が暴力団員か否かは、施設利用の許否の判断の基礎となる重要な事項にあたる。したがって、暴力団員であることを秘して施設利用を申し込む行為は、同伴者が暴力団員でないことを保証する旨の意思表示を含み、相手方を誤信させる「欺罔行為」にあたる。
重要事実
暴力団員の被告人は、暴力団員の入場・利用を約款で禁止し、入会時に暴力団員の同伴・紹介をしない旨を誓約させているゴルフ場において、同倶楽部会員のAと共謀した。Aは、被告人が暴力団員であることを隠すため、署名簿への代署を依頼するなどの異例な方法で施設利用を申し込み、従業員に被告人が暴力団員でないと誤信させ、ゴルフ場利用契約を成立させた。被告人は同施設を利用し、後日Aが利用料金を精算した。
あてはめ
本件ゴルフ場は、安全で快適なプレー環境の確保等の経営上の観点から、約款等により暴力団員の利用を厳格に禁止していた。このような状況下では、利用者が暴力団員か否かは施設利用の許否を決する「重要な事項」といえる。会員Aによる申込みは、会員が暴力団関係者の同伴・紹介をしない旨を誓約している以上、同伴者が暴力団員でないことを保証する意思表示を含む。そのため、被告人が暴力団員であると申告せずに施設利用を申し込んだ行為は、従業員の誤信を誘う「欺罔行為」に他ならない。被告人はこれによって利用契約を成立させ、現に施設を利用して財産上の利益を得たといえる。
結論
被告人とAには、刑法246条2項の詐欺罪(利益詐欺)の共謀共同正犯が成立する。
実務上の射程
本判決は、施設利用等の役務提供における「重要な事項」の判断基準を示したものである。ゴルフ場側の暴力団排除の姿勢(約款、誓約書、データベース照合等)が具体的であれば、属性を秘匿して利用する行為に詐欺罪が成立することを認めた。答案上は、被害者側の具体的な排除措置を摘示した上で、属性の秘匿が「処分判断の基礎となる重要事項」の偽りであることを論証する際に活用する。なお、本件は1項詐欺(ゴルフ用品の購入等)ではなく2項詐欺の問題である点に注意を要する。
事件番号: 平成25(あ)3 / 裁判年月日: 平成26年3月28日 / 結論: 破棄自判
暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において,暴力団関係者であるビジター利用客が,暴力団関係者であることを申告せずに,一般の利用客と同様に,氏名等を偽りなく記入した受付表等を提出して施設利用を申し込む行為は,ゴルフ場の従業員から暴力団関係者でないことを確認されなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,申込者が…