外国行きの自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に対し乗客として自己の氏名が記載された航空券を呈示して搭乗券の交付を請求し,その交付を受けた行為は,搭乗券の交付を請求する者が航空券記載の乗客本人であることについて厳重な確認が行われていたなどの本件事実関係の下では,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。
他の者を搭乗させる意図を秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に外国行きの自己に対する搭乗券の交付を請求してその交付を受けた行為が,詐欺罪に当たるとされた事例
刑法246条1項
判旨
搭乗券の交付を請求する者が、自ら搭乗する意図がないのにこれを秘して搭乗券の交付を受ける行為は、詐欺罪(刑法246条1項)を構成する。
問題の所在(論点)
自己名義の航空券等に基づき搭乗券の交付を請求する際、他人に渡す意図を秘すことが、詐欺罪(刑法246条1項)の「欺く行為」に該当するか。搭乗券を請求する者が「自ら搭乗するか否か」が交付の判断の基礎となる「重要な事項」といえるかが問題となる。
規範
詐欺罪における「欺く行為」とは、交付の判断の基礎となる重要な事項について真実を偽ることをいう。相手方が、ある事実が告知されれば交付に応じないという関係にある場合、その事実は交付の判断の基礎となる重要な事項にあたり、これを秘して交付を求める行為は「欺く行為」に該当する。
重要事実
被告人らは、カナダへの不法入国を企図する中国人に搭乗券を渡して搭乗させる意図であったが、これを秘し、あたかも自ら搭乗するかのように装って、係員に対し自己名義の航空券及び旅券を呈示して搭乗券の交付を請求した。航空会社側は、航空の安全確保や不法入国防止の観点から厳重な本人確認を行っており、請求者が他者に渡す意図であると知れば交付に応じない体制であった。
あてはめ
本件航空会社では、運航の安全確保やカナダ政府からの不法入国防止義務の履行という経営上の重要な要請から、厳重な本人確認が行われていた。すなわち、当該乗客以外の者の搭乗を防止することは航空運送事業の経営上重要性を有しており、係員は請求者が他人に搭乗券を渡す意図があると知れば交付に応じることはなかったといえる。したがって、請求者自身が搭乗するかどうかは、交付の判断の基礎となる重要な事項であると評価される。これを秘して交付を求める行為は、相手方を誤信させる「欺く行為」にあたる。
結論
被告人らの行為は詐欺罪(246条1項)の構成要件に該当し、詐欺罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
本判決は、単に「氏名を偽る」ことではなく、「自ら利用する意思の有無」が交付判断に直結する社会的・経営的背景がある場合に、その秘匿を詐欺罪の欺罔行為として認めた。同様の論理は、転売禁止が明示されたチケットの購入や、本人利用に限定されたサービスの利用申込等にも応用され得る。
事件番号: 平成14(あ)1647 / 裁判年月日: 平成16年2月9日 / 結論: 棄却
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