暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において,暴力団関係者であるビジター利用客が,暴力団関係者であることを申告せずに,一般の利用客と同様に,氏名等を偽りなく記入した受付表等を提出して施設利用を申し込む行為は,ゴルフ場の従業員から暴力団関係者でないことを確認されなかったなどの本件事実関係(判文参照)の下では,申込者が当然に暴力団関係者でないことまで表しているとは認められず,詐欺罪にいう人を欺く行為には当たらない。 (反対意見がある。)
暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例
刑法246条2項,刑訴法411条3号
判旨
暴力団員がその身分を秘してゴルフ場利用を申し込む行為が、詐欺罪(刑法246条2項)の「人を欺く行為」に該当するか。
問題の所在(論点)
ゴルフ場が暴力団員等の立入禁止を掲げている状況下で、暴力団員が属性を申告せずに利用を申し込む挙動が、特段の確認措置がない場合でも「非暴力団員であることの黙示の意思表示」として欺罔行為に当たるか。
規範
詐欺罪における「人を欺く行為」とは、財産的処分決定の判断の基礎となる「重要な事項」について真実に反する表示をすることをいう。特段の定めのない限り、ビジター客が氏名等の所定事項を偽りなく記入して施設利用を申し込む行為は、通常の客と同様に施設を利用し料金を支払う意思を示すものではあるが、当然に「自己が暴力団員ではないこと」までを表明しているとまでは認められない。
重要事実
1. 被告人(暴力団員)は、暴力団員の利用を禁止する規約等があるゴルフ場BおよびCにおいて、フロントで氏名等を偽りなく記入し、施設利用を申し込んだ。2. 各ゴルフ場には暴力団排除の看板が設置されていたが、受付表に属性確認欄はなく、誓約書の提出も求められていなかった。3. 被告人は利用後に所定料金を支払った。4. ゴルフ場Cは原則会員制であり、会員Eの同伴という形であったが、被告人がEに働きかけて予約させた等の事情はなかった。
あてはめ
1. 被告人らは、氏名等の記入事項について虚偽の記載をしておらず、受付時に属性の確認や誓約の要求も受けていない。2. 暴力団排除の看板設置等はあったが、近隣では利用が黙認される例もあり、警察の指導が徹底されていたわけではない。3. したがって、単なる利用申込行為が、料金支払の意思を超えて「暴力団員ではないこと」を当然に表明する挙動であるとは評価できない。4. ゴルフ場Cの件についても、会員Eによる予約等の状況を被告人が積極的に利用したといえる事情(働きかけ等)はなく、挙動による欺罔とは認められない。
結論
被告人の行為は「人を欺く行為」に当たらない。したがって、詐欺罪は成立せず、被告人は無罪である。
実務上の射程
本判決は、単に「約款で禁止されている属性」を秘して申し込むだけでは直ちに欺罔とはならないことを示した。司法試験の答案上は、本判例をベースとしつつ、①属性確認欄の有無、②誓約書への署名の有無、③虚偽氏名の使用有無といった「不作為・挙動による欺罔」の具体的判断要素を峻別して論じることが肝要である。
事件番号: 平成25(あ)725 / 裁判年月日: 平成26年3月28日 / 結論: 棄却
ゴルフ倶楽部会員において,同伴者が暴力団関係者であることを申告せずにそのゴルフ場の施設利用を申し込み,同人に施設を利用させた行為は,入会の際に暴力団関係者を同伴しない旨誓約していたなどの本件事実関係(判文参照)の下では,刑法246条2項の詐欺罪に当たる。 (意見がある。)