権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。
権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産につき所有権の登記名義人に対し当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟と当該社団の原告適格
民法33条,民訴法第1編第3章 当事者,民訴法29条,不動産登記法63条1項
判旨
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続を求める訴訟の原告適格を有する。
問題の所在(論点)
権利能力のない社団は、構成員に総有的に帰属する不動産について、代表者個人名義への移転登記を求める訴訟の原告適格を有するか。また、判決主文に代表者の肩書を付して登記を命じることは許されるか。
規範
権利能力のない社団(以下「社団」)は、その構成員全員に総有的に帰属する不動産について、実質的には当該社団が有しているという実態に即し、紛争解決の簡便性および関係者の意識への合致の観点から、社団自身が当事者として登記に関する訴訟を追行する原告適格を有する。この場合、社団は代表者個人名義への所有権移転登記を求めることができ、その確定判決の効力は構成員全員に及ぶため、代表者は執行文の付与を受けることなく登記申請が可能である。
重要事実
社団である被上告人は、その構成員全員に総有的に帰属する土地について、共有持分の登記名義人の相続人である上告人に対し、委任終了を原因として、被上告人の代表者Aへの持分移転登記手続を求める訴訟を提起した。原審が「被上告人代表者Aに対し」登記手続をせよとの請求を認容したところ、上告人は、①社団自身には原告適格がない、②代表者の肩書を付した個人名義の登記は許されないため原判決は違法である、と主張して上告した。
あてはめ
①原告適格について、社団が当事者として訴訟を追行することは紛争の簡明な解決に資する。代表者個人が原告となる訴訟(昭和47年判例)が認められているからといって、社団自身の原告適格を否定する理由にはならない。②主文の表現について、社団の代表者の肩書を付した個人名義の登記自体は不動産登記法上許されないが、判決主文に「被上告人代表者A」と記載されていることは、あくまでAという個人名義への登記を命ずる趣旨と解される。したがって、肩書の記載をもって判決を違法とすることはできない。
結論
権利能力のない社団は、代表者個人名義への移転登記を求める訴訟の原告適格を有する。また、主文に代表者としての肩書が付されていても、個人名義への登記を命じる趣旨と解されるため適法である。
実務上の射程
社団の不動産をめぐる訴訟において、代表者個人を原告とする方法だけでなく、民訴法29条に基づき社団自身を原告とする構成も可能であることを明示した。答案上は、登記名義が個人にならざるを得ない実務の制約と、社団の団体性を尊重する訴訟担当の理屈を接続する際に活用する。
事件番号: 平成3(オ)1724 / 裁判年月日: 平成6年5月31日 / 結論: 破棄差戻
一 入会権者である村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、右入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産についての総有権確認請求訴訟の原告適格を有する。 二 権利能力のない社団である入会団体の代表者が構成員全員の総有に属する不動産について総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行するには、右…
事件番号: 昭和31(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利能力なき社団の代表者が、社団のために自己の名において締結した契約の効果は、当該社団の構成員全員に帰属する。 第1 事案の概要:被上告人は、権利能力なき社団である「懇話会」の代表者であり、同会の活動に関連して上告人との間で売買契約を締結した。この際、被上告人は同会の会員全員のために、自己の名にお…
事件番号: 昭和50(オ)702 / 裁判年月日: 昭和55年2月8日 / 結論: 棄却
権利能力なき社団の複数の代表者の各々が構成員の総有に属する不動産について構成員から信託的に管理権限を与えられている場合であつても、その不動産が右社団にとつて重要な資産であり、代表者全員の共有名義とされているなど、判示の事情があるときには、各代表者は、代表者全員の合意に基づくのでなければ、右管理権限に基づき右不動産につき…
事件番号: 昭和26(オ)107 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 破棄差戻
一 甲から不動産を買受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないに拘らず、甲から丙名義に所有権移転登記を受けることを承認したときは、民法第九四条第二項を類推し、乙は丙が所有権を取得しなかつたことを以て善意の第三者に対抗し得ないものと解すべきである。 二 乙が買受けた不動産につき単に名義上所有権取得の登記を受けたにすぎ…