権利能力なき社団の複数の代表者の各々が構成員の総有に属する不動産について構成員から信託的に管理権限を与えられている場合であつても、その不動産が右社団にとつて重要な資産であり、代表者全員の共有名義とされているなど、判示の事情があるときには、各代表者は、代表者全員の合意に基づくのでなければ、右管理権限に基づき右不動産につき総有権確認を請求することができない。
権利能力なき社団の代表者が構成員の総有に属する不動産について構成員から信託的に与えられた財産管理権限に基づき総有権確認請求をすることができないとされた事例
民法33条,民法43条,民訴法46条,民訴法225条
判旨
権利能力なき社団の代表者が、社団にとって重要な資産である総有財産につき、構成員の総有権確認を求める訴えを提起することは、原則として構成員全員の同意または代表者全員の合意を要する処分行為にあたり、単独の意思では権限を欠く。
問題の所在(論点)
権利能力なき社団の代表者が、単独の意思によって、社団の重要資産に関する構成員の総有権確認訴訟を提起する権限を有するか。また、社団自体が所有権の主体となり得るか。
規範
権利能力なき社団の財産は構成員の総有に属し、社団自体は所有権の主体となれない。代表者がなしうるのは、通常業務の範囲に属する保存・管理・収益行為に限られる。社団にとって重要な資産について構成員の総有権そのものを失わせるおそれのある総有権確認請求は、実体上の処分行為と同視すべきである。したがって、かかる訴えの提起には、原則として構成員全員の特別の合意を要し、仮に権限が代表者に委ねられている場合でも、代表者全員の合意を要する。
重要事実
権利能力なき社団である「祠堂」の敷地(本件土地)は、社団にとって重要な資産であり、構成員の総有に属していた。かつては4名の代表者の共有名義で登記されていたが、代表者の一人である上告人が、社団自体が所有者であること、または構成員の総有に属することの確認を求めて提訴した。しかし、他の代表者の中には総有関係を否定する者がおり、代表者全員の同意は得られない状況であった。
事件番号: 昭和50(オ)701 / 裁判年月日: 昭和55年2月8日 / 結論: 棄却
一 沖繩における血縁団体であるいわゆる門中が、家譜記録等によつて構成員の範囲を特定することができ、慣行により、有力家の当主を代表機関とし、かつ、毎年一定の時期に構成員の総意によつて選任される当番員を日常業務の執行機関として定め、また、祖先の一人によつて寄附された土地等の財産を門中財産として有し、これを管理利用して得た収…
あてはめ
まず、社団自体は私法上の所有権の主体となれないため、社団名義の確認請求は失当である。次に、代表者による総有権確認請求について検討するに、本件土地は社団にとって重要な資産であり、その確認訴訟で敗訴すれば構成員の総有権を失わせるのと同様の結果を招く。これは通常の管理業務を超えた「処分行為」と同視される。本件では、登記が4名共有とされていた背景もあり、処分行為には代表者全員の合意が必要と解されるが、上告人は他の代表者の同意を得ておらず、反対派を除く構成員からの特別の授権も認められない。
結論
社団名義の請求は権利能力を欠き失当である。また、代表者個人による総有権確認請求も、重要資産の処分行為に準ずるものとして代表者全員の合意や特別の授権を要するため、単独での提訴は権限を欠き不適法(棄却)とされる。
実務上の射程
権利能力なき社団の訴訟担当に関する基本判例である。保存行為(不実な登記の抹消、侵害排除)や少額の不当利得返還請求は代表者の単独権限で行えるが、確認訴訟や重要資産の処分が絡む場合は、構成員全員の合意や代表者全員の合意といった厳格な要件が必要になるという枠組みを示す際に用いる。
事件番号: 昭和30(オ)90 / 裁判年月日: 昭和32年3月8日 / 結論: 棄却
一村内の部落が、財産を有せず、且つ営造物を設けていないときは、民訴四五条の当事者能力を有しない。
事件番号: 昭和31(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利能力なき社団の代表者が、社団のために自己の名において締結した契約の効果は、当該社団の構成員全員に帰属する。 第1 事案の概要:被上告人は、権利能力なき社団である「懇話会」の代表者であり、同会の活動に関連して上告人との間で売買契約を締結した。この際、被上告人は同会の会員全員のために、自己の名にお…
事件番号: 昭和57(オ)1392 / 裁判年月日: 昭和60年11月29日 / 結論: 棄却
一 水産業協同組合法四五条の準用する民法五四条にいう「善意」とは、理事の代表権に制限を加える定款の規定又は総会の決議の存在を知らないことをいうと解すべきである。 二 水産業協同組合法四五条の準用する民法五四条の「善意」の主張・立証責任は第三者にあるものと解すべきである。 三 第三者が水産業協同組合法四五条の準用する民法…
事件番号: 平成23(受)2196 / 裁判年月日: 平成26年2月27日 / 結論: 棄却
権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。