一 沖繩における血縁団体であるいわゆる門中が、家譜記録等によつて構成員の範囲を特定することができ、慣行により、有力家の当主を代表機関とし、かつ、毎年一定の時期に構成員の総意によつて選任される当番員を日常業務の執行機関として定め、また、祖先の一人によつて寄附された土地等の財産を門中財産として有し、これを管理利用して得た収益によつて祖先の祭祀等の行事、門中模合(頼母子講の一種)その他の相互扶助事業を行つてきたなど、判示のような実態を有する場合には、その門中は権利能力なき社団にあたる。 二 権利能力なき社団において、代表者が欠け遅滞のため損害を生ずるおそれのある場合には、裁判所は、民法五六条を類推して仮理事を選任することができる。
一 沖繩における血縁団体であるいわゆる門中が権利能力なき社団にあたるとされた事例 二 権利能力なき社団と仮理事の選任
民法33条,民法56条,民訴法46条
判旨
沖縄の門中について、不文の規約に基づく管理運営機関や構成員確定基準が存在する場合、権利能力なき社団として当事者能力が認められる。また、権利能力なき社団の代表者が欠け損害の恐れがあるときは、民法56条を類推適用して仮理事を選任できる。
問題の所在(論点)
沖縄の血縁団体である「門中」が権利能力なき社団として民事訴訟法上の当事者能力を有するか。また、権利能力なき社団に民法56条を類推適用して仮理事を選任できるか。
規範
1. 団体が「代表者の定めのある権利能力なき社団」(民事訴訟法29条、旧46条)として当事者能力を有するためには、①団体としての組織を備え、②多数決の原則が合意され、③構成員の変更に関わらず団体が存続し、④代表者の選任方法・総会・管理等の運営に関する定めがあることを要する。 2. 権利能力なき社団においても、業務執行機関が欠け、遅滞により損害を生ずるおそれがある場合には、民法56条(現行一般法人法等に相当する仮理事の規定)を類推適用して仮理事を選任できる。この際、規約等により代表資格のない者であっても仮理事に選任され得る。
事件番号: 昭和50(オ)702 / 裁判年月日: 昭和55年2月8日 / 結論: 棄却
権利能力なき社団の複数の代表者の各々が構成員の総有に属する不動産について構成員から信託的に管理権限を与えられている場合であつても、その不動産が右社団にとつて重要な資産であり、代表者全員の共有名義とされているなど、判示の事情があるときには、各代表者は、代表者全員の合意に基づくのでなければ、右管理権限に基づき右不動産につき…
重要事実
被上告人B1(門中)は、共通の祖先を持つ血縁団体であり、明治時代から不文の規約に基づき代表者(特定家の当主)や執行機関(アタイ)、意思決定機関(長老会議)を置いて財産管理や祭祀を行ってきた。門中員の範囲も家譜や戸籍、口伝等により客観的に確定可能であった。訴訟継続中に代表者(L家当主)が死亡したが、裁判所は構成員ではあるが代表資格(家当主)を持たない者を「仮理事」に選任した。上告人は、B1の当事者能力および仮理事による承継の適法性を争った。
あてはめ
1. 被上告人B1は、代表者選任の慣行や業務執行機関、重要事項の決定機関が不文の規約として確立しており(要件④)、明治以降中断を含みつつも祭祀や相互扶助事業を継続している(要件①③)。構成員の範囲も客観的資料により確定可能である。したがって、代表者の定めのある権利能力なき社団に該当し、当事者能力が認められる。 2. 代表者B2の死亡により業務執行機関が欠けた本件では、損害防止のため民法56条を類推適用して仮理事を選任できる。仮理事は暫定的な機関であるため、本来の規約上の代表資格(L家当主等)を持たない者であっても選任は適法であり、訴訟を承継できる。
結論
被上告人門中は権利能力なき社団として当事者能力を有し、選任された仮理事による訴訟承継も適法である。
実務上の射程
社団の要件について、特に「不文の規約」や「慣行」であっても、組織性や運営実態が客観的に証明されれば足りることを示した。また、民法56条(仮理事)の類推適用を認めた点は、権利能力なき社団が関わる訴訟において代表者が死亡・欠員となった際の救済手段として重要な射程を持つ。
事件番号: 昭和30(オ)90 / 裁判年月日: 昭和32年3月8日 / 結論: 棄却
一村内の部落が、財産を有せず、且つ営造物を設けていないときは、民訴四五条の当事者能力を有しない。
事件番号: 昭和57(オ)1392 / 裁判年月日: 昭和60年11月29日 / 結論: 棄却
一 水産業協同組合法四五条の準用する民法五四条にいう「善意」とは、理事の代表権に制限を加える定款の規定又は総会の決議の存在を知らないことをいうと解すべきである。 二 水産業協同組合法四五条の準用する民法五四条の「善意」の主張・立証責任は第三者にあるものと解すべきである。 三 第三者が水産業協同組合法四五条の準用する民法…
事件番号: 平成23(受)2196 / 裁判年月日: 平成26年2月27日 / 結論: 棄却
権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。