一、権利能力なき社団の資産たる不動産については、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者とする登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである。 二、権利能力なき社団の資産たる不動産につき、登記簿上所有名義人となつた代表者がその地位を失い、これに代わる新代表者が選任されたときは、新代表者は、旧代表者に対して、当該不動産につき自己の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることができる。
一、権利能力なき社団の資産たる不動産についての登記方法 二、権利能力なき社団の資産たる不動産につき登記簿上所有名義人となつていた代表者が交替した場合における新代表者の旧代表者に対する登記請求権
民法43条,民法177条,民訴法46条,民訴法208条1項,民訴法211条,民訴法212条,民訴法384条,不動産登記法26条,不動産登記法36条,不動産登記法110条の3
判旨
権利能力なき社団の不動産については、代表者個人名義の登記が認められ、代表者の交代に伴い、新代表者は旧代表者に対し所有権移転登記を請求できる。
問題の所在(論点)
権利能力なき社団の資産である不動産につき、代表者個人名義の登記が許容されるか。また、代表者が交代した場合に、新代表者が旧代表者に対して個人名義への所有権移転登記を請求できるか。
規範
権利能力なき社団は登記申請の適格を有しないが、その資産は構成員全員に総有的に帰属するため、代表者個人への信託的譲渡による代表者名義の登記が可能である。代表者が交代した場合、旧代表者は信託の受託者たる地位を失い、新代表者がその地位を取得するため、新代表者は信託法上の受託者の更迭に準じ、旧代表者に対して個人名義への所有権移転登記手続を訴求できる。
重要事実
事件番号: 平成23(受)2196 / 裁判年月日: 平成26年2月27日 / 結論: 棄却
権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。
権利能力なき社団であるD同郷連合会の不動産について、代表者であった上告人の名義で登記がなされていた。その後、上告人が代表者の地位を失い、新たにE(後に死亡し被上告人が訴訟承継)が代表者に選任された。新代表者は、旧代表者である上告人に対し、当該不動産の所有権移転登記手続を求めて提訴した。これに対し上告人は、社団自身に当事者適格があることや、代表者個人名義の登記は認められないことを理由に争った。
あてはめ
まず、社団は実体法上の権利能力を欠くため、不動産登記法上も登記申請人とはなれない。次に、社団の資産は構成員全員の総有に属するが、全員名義の登記は困難である。そこで、構成員全員のために信託的に代表者個人が受託者として所有権を取得し、登記名義人となることが認められる。本件では代表者が上告人から被上告人の前主(E)へと交代しており、信託の受託者の更迭に準ずる事態が生じている。したがって、新受託者の地位にある被上告人は、旧受託者たる上告人に登記移転を請求しうる。
結論
権利能力なき社団の代表者が交代した場合、新代表者は旧代表者に対し、自己の個人名義への所有権移転登記手続を請求することができる。
実務上の射程
権利能力なき社団の対外関係(登記)の処理を「代表者個人への信託」と構成するリーディングケースである。答案上は、登記名義を社団名義や「社団代表者某」という肩書付きで求めることはできない点に注意が必要である。また、本判決は登記請求権の帰属を本案の問題(実体法上の権利関係)として扱っており、訴訟承継等の手続的側面との区別も重要となる。
事件番号: 昭和50(オ)702 / 裁判年月日: 昭和55年2月8日 / 結論: 棄却
権利能力なき社団の複数の代表者の各々が構成員の総有に属する不動産について構成員から信託的に管理権限を与えられている場合であつても、その不動産が右社団にとつて重要な資産であり、代表者全員の共有名義とされているなど、判示の事情があるときには、各代表者は、代表者全員の合意に基づくのでなければ、右管理権限に基づき右不動産につき…
事件番号: 昭和43(オ)602 / 裁判年月日: 昭和44年3月27日 / 結論: その他
共有登記のなされている不動産につき、共有者の一人が持分権を放棄した場合には、他の共有者は、放棄にかかる持分権の移転登記手続を求めるべきであつて、放棄者の持分権取得登記の抹消登記手続を求めることは許されない。
事件番号: 昭和31(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利能力なき社団の代表者が、社団のために自己の名において締結した契約の効果は、当該社団の構成員全員に帰属する。 第1 事案の概要:被上告人は、権利能力なき社団である「懇話会」の代表者であり、同会の活動に関連して上告人との間で売買契約を締結した。この際、被上告人は同会の会員全員のために、自己の名にお…
事件番号: 昭和34(オ)650 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: その他
入会権確認の訴は、入会権が共有の性質を有するかどうかを問わず、入会権者全員で提起することを要する固有必要的共同訴訟である。