共有登記のなされている不動産につき、共有者の一人が持分権を放棄した場合には、他の共有者は、放棄にかかる持分権の移転登記手続を求めるべきであつて、放棄者の持分権取得登記の抹消登記手続を求めることは許されない。
共有持分権の放棄と登記方法
民法177条,民法255条,不動産登記法1条
判旨
不動産の共有者の一人が持分を放棄し、他の共有者がその持分を取得した場合、その権利変動を第三者に対抗するためには、持分移転登記をすべきであり、既になされている持分取得登記の抹消登記を求めることはできない。
問題の所在(論点)
共有者の一人が持分を放棄し、他の共有者がその持分を取得した場合において、その権利変動を公示するための登記手続として、既になされている登記の「抹消登記」を求めることができるか、あるいは「持分移転登記」をなすべきかが問題となる。
規範
不動産共有者の一人による持分放棄に伴う権利変動の対抗要件(民法177条)を具備するためには、実体的な権利変動の態様(移転)に即した登記手続が必要である。すなわち、既になされている登記を抹消する形式ではなく、放棄に係る持分権の移転登記をなすべきである。
重要事実
本件不動産は、当初、上告人とDの共有に属していた。昭和19年3月、上告人がその持分権を放棄したことにより、Dがその持分を取得して単独所有者となった。しかし、登記実務上または訴訟上の請求として、上告人が持分権を取得した際の登記を抹消する手続が命じられていた。
あてはめ
本件では、上告人の持分放棄によってDがその持分を取得したという事実が認定されている。この場合、権利の帰属が上告人からDへと「移転」したと解される。不動産登記法上、権利の主体が交代する変動については移転登記によるべきであり、当初からその登記が原因無効である場合等を除き、既になされている有効な持分取得登記を抹消する手法は、実体的な権利変動の過程を正しく反映するものとはいえない。したがって、抹消登記を命じた原審の判断は不動産登記法の解釈適用を誤っている。
結論
持分放棄による権利取得を対抗するためには持分権移転登記をすべきであり、持分権取得登記の抹消登記を求めることはできない。
実務上の射程
共有持分放棄(民法255条)による帰属変更が「移転」の性質を持つことを確認した判例である。答案上は、登記請求権の性質や内容を論ずる際、実体的な権利変動(移転か原始的無効か)と登記態様の一致を求める文脈で使用する。
事件番号: 昭和41(オ)602 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 破棄差戻
一、判示の事情により、甲不動産につき抵当権設定契約および代物弁済予約形式の合意がされるとともに、乙不動産につき同一債権の担保を目的とする所有名義移転の合意がされた場合において、右両不動産の価額と弁済期までの債務元利金額とが合理的均衡を失するときは、債権者は、特別な事情のないかぎり、右両不動産を換価処分してこれによつて得…
事件番号: 昭和42(オ)524 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 棄却
部落民全員が、その総有に属する土地について、入会権者として登記の必要に迫られ、単に登記の便宜から、右部落民の一部の者のために売買による所有権移転登記を経由した場合には、民法第九四条第二項の適用または類推適用がない。
事件番号: 昭和33(オ)602 / 裁判年月日: 昭和36年6月6日 / 結論: 棄却
順次なされた所有権移転登記の中間取得者のみを被告とし、当該被告よりさらに移転登記を受けた者を共同被告としない抹消登記手続請求も許される。
事件番号: 昭和40(オ)992 / 裁判年月日: 昭和41年9月29日 / 結論: その他
甲所有の山林につき国がいわゆる未墾地買収をした後、乙が甲から右山林を二重に譲り受けてその旨の所有権取得登記をした場合には、右取得登記以前に国から売渡を受けた丙が右山林の登記簿を閉鎖することなく、新たに所有権保存登記を了していたとしても、右保存登記は二重登記であつて効力がないから、結局、丙は右山林の所有権取得をもつて乙に…