順次なされた所有権移転登記の中間取得者のみを被告とし、当該被告よりさらに移転登記を受けた者を共同被告としない抹消登記手続請求も許される。
順次なされた所有権移転登記の中間取得者のみを被告とする抹消登記手続請求の許否。
民訴法62条
判旨
被告が原告に対し所有権移転登記抹消義務を負う場合、転得者が存在したとしても、当該被告のみを相手方として抹消登記手続を請求することは許容される。判決確定による意思表示の擬制の効果は、不動産登記法上の登記実行の可否とは別個に生じるため、転得者の承諾がないとしても訴えが不適法になることはない。
問題の所在(論点)
登記名義人からさらに第三者(転得者)へ所有権移転登記がなされている場合に、元の登記名義人のみを被告として抹消登記請求を行うことが認められるか。また、転得者の承諾がないことによって登記の実行が不可能となる可能性が、訴えの適法性に影響を及ぼすか。
規範
登記抹消義務を負う特定の被告に対する請求において、他に転得者が存在する場合であっても、その転得者を共同被告とすることは必要ではない。意思の陳述を命ずる判決は、判決の確定によって意思の陳述がなされたものとみなされる(民事執行法174条1項、旧民訴法736条)ため、不動産登記法上の利害関係人の承諾が得られず現実に登記の抹消が不可能になるとしても、そのことは当該被告に対する訴えの適法性を左右しない。
重要事実
原告が、特定の被告に対して所有権移転登記の抹消登記手続を求めた事案。当該被告からさらに所有権移転登記を受けた「転得者」が存在していたため、被告側は、その転得者を共同被告としなければならない(固有必要的共同訴訟に類する主張)として、被告のみを相手方とする訴えの適法性を争った。
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
あてはめ
本件において、被告が原告に対して登記抹消義務を有するという実体法上の関係がある限り、被告のみを相手方とする請求は認められる。判決が確定すれば法的に意思の陳述がなされたものとみなされるため、執行段階における不動産登記法上の制約(利害関係人の承諾の要否等)は、手続上の問題にとどまる。したがって、転得者の承諾がないために登記が実行できない可能性があっても、それは被告に対する請求の適法性を妨げる理由にはならない。
結論
被告が登記抹消義務を負う限り、転得者を共同被告とすることなく、当該被告のみを相手方とする抹消登記手続の請求を認容することができる。
実務上の射程
登記抹消請求における被告適格および訴えの利益に関する判断。実務上、中間省略登記の抹消や転得者がいる場合の登記請求において、全員を被告とする必要がないことを示唆する。答案上は、登記請求の相手方選択の自由や、意思表示を命ずる判決の効力と登記手続の実行可能性を峻別する際に活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…
事件番号: 昭和33(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: その他
共同相続人の一人が単独相続による所有権全部取得の登記をなした場合、他の共同相続人は、共有名義に変更を求める登記更正手続の請求はできるが、右登記全部の抹消を求めることはできない。
事件番号: 昭和34(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第一の譲受人は、自らが未だ所有権移転登記を備えていない以上、第二の譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。これは、第二の譲受人の有する登記が有効であるか否かを問わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産を譲り受けたと主張しているが、未だその所有権取得の登…
事件番号: 昭和33(オ)177 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】通謀虚偽表示による無効は、第三者に対しても原則として主張することができ、また、虚偽表示の当事者から仮装の売買契約に基づき登記を移転した者は、不動産登記法上の「第三者」(民法177条)には該当しない。 第1 事案の概要:不動産の本来の譲受人である被上告人に対し、上告人と譲渡人Dは通謀して、昭和16年…