甲所有の山林につき国がいわゆる未墾地買収をした後、乙が甲から右山林を二重に譲り受けてその旨の所有権取得登記をした場合には、右取得登記以前に国から売渡を受けた丙が右山林の登記簿を閉鎖することなく、新たに所有権保存登記を了していたとしても、右保存登記は二重登記であつて効力がないから、結局、丙は右山林の所有権取得をもつて乙に対抗できない。
未墾地買収地の売渡を受けた者が右未墾地の登記簿を閉鎖することなく新たに保存登記を経由した場合にその後右土地を被買収者から譲り受けてその旨の取得登記を受けたときと民法第一七七条の適用
民法177条,自作農創設特別措置法30条,自作農創設特別措置法41条
判旨
農地買収処分による国の所有権取得と、旧所有者からの譲受人による所有権取得との関係は対抗関係(民法177条)に立ち、先に登記を備えた者が優先される。また、有効な登記が存在する土地になされた重ねての保存登記(二重登記)は無効であり、これをもって対抗要件とすることはできない。
問題の所在(論点)
国の農地買収処分による取得と第三者の取得は、民法177条の対抗関係に立つか。また、既存の登記がある土地になされた不実の所有権保存登記(二重登記)に、対抗力としての効力は認められるか。
規範
自作農創設特別措置法に基づく未墾地買収処分による国の所有権取得は、私法上の売買と同様、第三者との関係では民法177条の適用を受ける対抗問題となる。また、既に表題部・権利部の登記が存在する土地に対し、同一の土地について重ねてなされた所有権保存登記は、不動産登記法の原則に反する二重登記として無効である。
重要事実
もとD所有の土地(目録二)につき、Hが家督相続により取得し、その後、昭和31年に上告人(買主)が売買により取得して所有権移転登記を完了した。一方で、国は昭和24年に同土地を未墾地買収処分し、昭和27年に被上告人B1へ売り渡した。B1は昭和28年に保存登記をなしたが、上告人の登記がある登記簿は閉鎖されずに存続していた。上告人はB1に対し、土地の所有権確認を求めた。
事件番号: 昭和38(オ)889 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三〇条に基づく未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合でも、その所有権の取得については、民法第一七七条が適用される。
あてはめ
本件土地は、前所有者Hから、一方は未墾地買収により国(及び転得者B1)へ、他方は売買により上告人へと二重に譲渡されたのと同様の状況にある。この場合、国からの転得者B1と上告人の優劣は登記の前後で決するべきである。上告人は適法な移転登記を備えている一方、B1のなした保存登記は、既に存在する上告人側の登記簿と重複してなされた二重登記であり、無効というほかない。したがって、B1は無効な登記を根拠に、適法な登記を有する上告人に対して所有権を対抗することができない。
結論
未墾地買収処分が有効であっても、先に登記を備えた上告人が優先する。二重登記に効力はないため、B1は上告人に対抗できず、上告人の請求を排斥した原判決は破棄される。
実務上の射程
農地買収に関する対抗問題(177条の適用)を認めた重要判例。答案上は、公権力的処分であっても私法上の物権変動と同様の規律が及ぶ点、および二重登記の無効原則を示す際に引用する。特に不動産登記法上の「一不動産一登記記録の原則」から、後記の保存登記には対抗力が認められないことを論証する材料となる。
事件番号: 昭和41(オ)840 / 裁判年月日: 昭和42年1月27日 / 結論: 棄却
一 農地法第四四条に基づく未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合でも、その所有権の取得については、民法第一七七条が適用される。 二 農地法第六〇条は、買収手続の過程で権利者が変動して買収手続がその効力を失うことなどによる手続の繁雑化を避けるため、買収の効果の発生までに権利関係の変動があつても、その承継人に対し…
事件番号: 昭和40(オ)1031 / 裁判年月日: 昭和41年7月28日 / 結論: 棄却
村税滞納処分による差押についても、民法第一七七条の適用があるものと解すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)654 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
地盤上に植栽された立木の所有権を取得した者は、明認方法等の対抗要件を備えないかぎり、右地盤(土地)を地上の右立木とともに買いうけ右土地についてその所有権移転登記を経由した第三者に対し、前記立木所有権取得を対抗することができない。
事件番号: 昭和28(オ)1452 / 裁判年月日: 昭和29年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記には公信力が認められないため、真実の権利関係と異なる登記を信頼して取引をしたとしても、当然には権利を取得することはできない。 第1 事案の概要:上告人らは、不動産登記上の表示を信頼して取引を行ったものと推認されるが、当該登記に係る権利関係が真実のものと合致していなかった。上告人らは、民法…