一 農地法第四四条に基づく未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合でも、その所有権の取得については、民法第一七七条が適用される。 二 農地法第六〇条は、買収手続の過程で権利者が変動して買収手続がその効力を失うことなどによる手続の繁雑化を避けるため、買収の効果の発生までに権利関係の変動があつても、その承継人に対し買収手続の効力が及ぶ旨を定めたものにすぎない。
一 農地法第四四条に基づく未墾地買収処分による国の所有権取得と民法第一七七条の適用 二 農地法第六〇条の法意
農地法44条,農地法60条,民法177条
判旨
農地法44条に基づく未墾地買収処分により国が取得した不動産の所有権については、民法177条の適用があり、国は登記なくしては第三者に対抗できない。農地法60条の規定は、買収手続の円滑な進行を目的とするものであり、国が所有権取得後にまで民法177条の適用を排除する趣旨ではない。
問題の所在(論点)
農地法44条に基づく未墾地買収処分による国の所有権取得について、民法177条が適用されるか。また、農地法60条が、国が所有権取得後に登記なくして権利を対抗できるとする特則として機能するか。
規範
1. 国が未墾地買収処分(農地法44条)により不動産の所有権を取得した場合、その取得については民法177条が適用される。2. 農地法60条(自作農創設特別措置法11条の準用)の規定は、買収手続の過程で権利者が変動することによる手続の繁雑化を避けるため、買収の効果発生までに生じた承継人に手続の効力を及ぼすことを定めたにすぎない。したがって、国が買収処分によって所有権を取得した後にまで、同条が民法177条の適用を排除するものではない。
重要事実
国は、農地法44条に基づき、本件土地に対して未墾地買収処分を行い、その所有権を取得した。しかし、国が所有権取得の登記を行う前に、第三者が当該土地の権利関係に関与した(詳細は判決文からは不明だが、第三者との対抗関係が生じている)。上告人は、農地法60条の規定を根拠に、国が登記なくして所有権を第三者に対抗できると主張し、民法177条の適用を否定して争った。
事件番号: 昭和39(オ)82 / 裁判年月日: 昭和39年11月19日 / 結論: その他
一 自作農創設特別措置法第三条に基づく農地の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得については、民法第一七七条の適用がある。 二 自作農創設特別措置法第一一条は、農地の買収計画の樹立以降買収の効果発生までに権利関係の変動があつた場合において、その農地の所有者などの承継人に対してのみ農地の買収手続…
あてはめ
まず、公法上の権利変動であっても、それが不動産に関する物権変動である以上、取引の安全を図る民法177条の趣旨は妥当する。次に、農地法60条について検討するに、同条の趣旨は、買収手続の最中に権利が承継された場合に、新権利者に対して手続を承継させ、手続のやり直しを防ぐという「手続の簡便化」にある。そうであるならば、買収処分が完了し、国が完全に所有権を取得した後の権利関係についてまで、公示(登記)を不要とする特権を国に付与したとは解されない。したがって、本件においても民法177条が適用される結果、国は登記がなければ第三者に対抗できない。
結論
国による未墾地買収処分後の所有権取得についても民法177条が適用され、登記がなければ第三者に対抗できない。したがって、これと異なる前提に立つ上告人の主張は認められない。
実務上の射程
本判決は、公法上の行政処分による物権変動であっても、民法177条の適用が排除されないことを明確にした射程の長い判例である。答案上は、租税滞納処分(177条適用あり)や農地買収処分(177条適用あり)の議論と同様に、「公法上の権利変動であっても、私法上の取引安全の要請が及ぶ不動産物権変動であれば、特段の規定がない限り177条が適用される」という文脈で使用する。農地法60条のような手続規定を、対抗要件の特例と混同してはならないという注意喚起にもなる。
事件番号: 昭和41(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和42年3月7日 / 結論: 棄却
農地法第七三条第一項本文によつて農林大臣の許可を必要とする土地等の所有権の移転には、私法上の契約によるものだけではなく、強制競売、任意競売および滞納処分としての公売によるものをも含む。
事件番号: 昭和34(オ)470 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未登記不動産の所有者がこれを譲渡した後でも、登記を備えない限り譲渡人は完全な無権利者とはならない。したがって、譲渡人名義でなされた保存登記およびそれを前提とする仮差押登記は、対抗関係の法理により有効である。 第1 事案の概要:訴外Dは、自己の所有する本件建物を未登記のまま上告人Aに売り渡した。その…
事件番号: 昭和40(オ)1016 / 裁判年月日: 昭和42年6月30日 / 結論: その他
甲が乙との間で自己所有の建物につき代物弁済の予約を締結し、乙が右予約に基づく完結権を行使したが、その所有権移転登記前に右完結の意思表示を撤回し、しかる後関係書類を利用して、右建物を自己名義に所有権移転登記を経由した場合には、乙から右建物を買受けてその旨の所有権移転登記を受けた丙および丙からこれを賃借した丁らは甲に対し右…
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。