農地法第七三条第一項本文によつて農林大臣の許可を必要とする土地等の所有権の移転には、私法上の契約によるものだけではなく、強制競売、任意競売および滞納処分としての公売によるものをも含む。
農地法第七三条第一項本文によつて農林大臣の許可を必要とする土地等の所有権の移転の原因
農地法73条1項
判旨
農地法73条が定める土地等の処分制限は、私法上の任意契約による所有権移転のみならず、強制競売、任意競売、および国税徴収法による滞納処分に伴う公売による所有権移転にも適用される。
問題の所在(論点)
農地法61条所定の土地等について、強制競売、任意競売、または滞納処分による公売によって所有権が移転する場合、農地法73条の規定が適用され、農林大臣の許可を要するか。
規範
農地法73条が権利の設定・移転に農林大臣の許可を要すると定めた趣旨は、自作農の創設・経営安定のために買収された土地等の目的に鑑み、当該目的を損なわないよう行政庁の監督に服させる点にある。かかる法の目的からすれば、権利移転が任意処分によるか、強制競売等の公的手段によるかによって、その取扱いに差異を設けるべきではない。
重要事実
自作農の創設または経営安定のために国に買収された農地法61条所定の土地等について、その所有権が強制競売、任意競売、または国税徴収法による滞納処分の例による公売等の手続により移転される事案が発生した。当該移転において、農地法73条が定める農林大臣の許可が必要か否かが争点となった。
事件番号: 昭和41(オ)840 / 裁判年月日: 昭和42年1月27日 / 結論: 棄却
一 農地法第四四条に基づく未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合でも、その所有権の取得については、民法第一七七条が適用される。 二 農地法第六〇条は、買収手続の過程で権利者が変動して買収手続がその効力を失うことなどによる手続の繁雑化を避けるため、買収の効果の発生までに権利関係の変動があつても、その承継人に対し…
あてはめ
農地法73条が処分制限を設けたのは、買収された土地の自作農創設という行政目的の達成を確保するためである。強制競売や滞納処分による移転であっても、その土地が本来の目的外に使用されるおそれがある点は任意処分と変わらない。したがって、法の趣旨に鑑みれば、強制競売等による所有権移転も同条の適用範囲に含まれると解するのが相当である。
結論
強制競売、任意競売、および滞納処分による公売による所有権移転にも農地法73条の規定は適用され、農林大臣の許可を要する。
実務上の射程
行政法上の目的を達成するための処分制限規定が、民事執行法上の競売や国税徴収法上の公売等の公的手続に及ぶかを判断する際の指針となる。法文が「処分」と広く定めている場合、その立法趣旨から公的手続を排除する理由がない限り、広く適用されると考えるべきである。答案上は、特別法による制限が公売等にも適用されるかという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和49(オ)398 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
時効による農地所有権の取得については、農地法三条の適用はない。
事件番号: 昭和49(オ)669 / 裁判年月日: 昭和51年8月30日 / 結論: 棄却
買受人が当初から宅地化する意図のもとに農地を買い受けたのち、間もなくこれを宅地化しても、右農地の所有権移転につき農地法三条の許可が不要となるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)705 / 裁判年月日: 昭和36年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買代金の支払方法に関する契約において、買主が残代金の大部分を期日に弁済しなかったことにより、担保の目的物たる山林の所有権が確定的に売主に帰属するとした原審の判断を適法として維持した。 第1 事案の概要:上告人(買主)と被上告人(売主)は、土地の売買契約を締結したが、その代金支払方法について、残代…
事件番号: 昭和42(オ)1415 / 裁判年月日: 昭和43年6月21日 / 結論: 棄却
農地法第五条の知事の許可を要する農地の売買契約で解約手附が授受された場合において、売主および買主が連署のうえ同条による許可申請書を知事あてに提出したときは、特約その他特別の事情のないかぎり、売主および買主は、民法第五五七条第一項にいう「契約ノ履行ニ著手」したものと解すべきである。