時効による農地所有権の取得については、農地法三条の適用はない。
農地所有権の時効取得と農地法三条の適用の有無
民法162条,農地法3条
判旨
農地法3条による許可の対象は、農地等につき新たに所有権を移転し、または使用収益を目的とする権利を設定・移転する「行為」に限られる。時効による所有権取得は原始取得であり、同条の許可を要しない。
問題の所在(論点)
農地について取得時効が完成した場合、その権利取得に際して農地法3条1項に基づく都道府県知事等の許可が必要か。
規範
農地法3条1項の許可を要する権利移動は、当事者の意思に基づく譲渡などの法的「行為」による場合に限定される。これに対し、時効取得は法律の規定に基づく原始取得であり、法律行為による権利の承継的移転には該当しない。したがって、時効による農地の取得については、農地法3条の許可を受ける必要はない。
重要事実
被上告人の先代Dが、本件土地(農地)について長期間占有を継続したことにより、時効による所有権取得を主張した事案である。上告人側は、農地法3条に基づく都道府県知事等の許可がない限り時効取得は認められない、あるいは不在地主となるような時効取得は許されない旨を主張して争った。
事件番号: 昭和49(オ)669 / 裁判年月日: 昭和51年8月30日 / 結論: 棄却
買受人が当初から宅地化する意図のもとに農地を買い受けたのち、間もなくこれを宅地化しても、右農地の所有権移転につき農地法三条の許可が不要となるものではない。
あてはめ
農地法3条が許可制を採る趣旨は、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図るための「行為」を規制する点にある。本件における時効取得は、時の経過という事実に基づき法律上当然に生じる原始取得であり、同条が予定する「所有権を移転し、又は使用収益を目的とする権利を設定若しくは移転する行為」には当たらない。また、取得者が不在地主になる等の事情により後に国に買収される可能性があったとしても、そのことは時効取得の成否そのものを左右する法的根拠とはならない。
結論
農地の時効取得には農地法3条の許可は不要である。したがって、許可がなくとも被上告人側は本件土地の所有権を時効により取得する。
実務上の射程
農地法3条の許可を要しない「承継によらない取得」の代表例として答案で活用できる。民法上の時効取得の効果(原始取得性)を重視する立場を明確にしており、不動産登記法上の実務(判決による登記)とも整合する。なお、遺産分割や相続による取得も同様に許可不要とされるが、これらと並んで「行為」の有無を基準とする判断枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和27(オ)653 / 裁判年月日: 昭和30年9月9日 / 結論: 棄却
一 農地の贈与についての知事の許可は、贈与の成立前になされることを要せず、許可のあつたときから右贈与は効力を生ずるものであり、許可当時贈与者が既に死亡していても、その効力の発生を妨げない。 二 受贈者に対する土地所有権移転登記が、死亡している贈与者名義でなされた場合であつても、右登記が死亡者およびその相続人の意志に反し…
事件番号: 昭和38(オ)40 / 裁判年月日: 昭和38年9月20日 / 結論: 棄却
債務不履行により農地の売買契約を解除する場合には、農地法第三条の適用がない。
事件番号: 昭和38(オ)1332 / 裁判年月日: 昭和40年7月22日 / 結論: 棄却
農地の権利移転についての知事の許可書の内容が不当に改ざんされたからといつて、一たん発生した許可処分の効力に何らの消長をもきたさない。