債務不履行により農地の売買契約を解除する場合には、農地法第三条の適用がない。
売買契約の解除と農地法第三条の適用。
農地法3条,民法545条
判旨
農地法3条1項所定の許可を要する「権利を移転」させる行為とは、新たに権利を取得させる行為を指し、売買契約の解除による所有権の復帰はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
農地売買契約の解除に伴う所有権の復帰が、農地法3条1項の「権利を移転」させる行為に該当し、都道府県知事の許可を要するか。
規範
農地法3条は、新たに所有権等の権利を取得しようとする者が同法1条の目的に適合するか否かを判定する趣旨の規定である。そのため、売買契約の解除は取消と同様に、初めから売買がなかった状態に戻すにすぎず、新たに所有権を取得させるものではないから、同条の許可を要しない。
重要事実
上告人は、農地の売買契約が債務不履行により解除された場合において、当該解除に伴う所有権の復帰(原状回復)には農地法3条に基づく都道府県知事の許可が必要であると主張した。原審が許可不要と判断したことを不服とし、同条の解釈に誤りがあるとして上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和49(オ)398 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
時効による農地所有権の取得については、農地法三条の適用はない。
売買契約の解除は、法的性質として既往に遡って契約を消滅させ、初めから売買がなかった状態に戻すものである。これは新たな権利取得を目的とするものではなく、許可の対象となった売買前の状態への回復にすぎない。たとえその結果、所有権が不在地主に復帰し、国による買収対象となる可能性が生じるとしても、そのことは別途考慮されるべき事柄であり、解除自体の効力が農地法3条により制限される理由とはならない。
結論
農地売買契約の解除には農地法3条の許可を要しない。したがって、許可がないことを理由に解除を無効とすることはできない。
実務上の射程
農地法3条の許可が「新たな権利取得」を規制対象としていることを明確にした。答案上では、物権変動の態様が「復帰的」なものである場合(解除、取消等)には、農地法上の許可という公法上の規制が及ばないことを説明する論拠として活用できる。なお、合意解除の場合にも同様に解するのが通説的見解である。
事件番号: 昭和37(オ)291 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
甲乙間の農地訴有権移転の許可申請書に添付されている農地売買契約書表示の契約年月日において甲乙間に直接売買がなされた事実はなく、真実は、前示年月日以前に甲丙間に売買契約が成立していたところ、丙の右契約にもとづく権利を乙が譲り受け、甲乙間に当該農地の所有権移転がなされるに至つた場合にあつては、申請書添付書類に右のような真実…
事件番号: 昭和36(オ)360 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
控訴人が「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。被控訴人の附帯控訴を棄却する。」旨の裁判を求め、第一審で棄却された反訴請求には何ら言及していない場合には、右反訴請求については、不服申立の範囲外であるとして控訴審の判断が示されなくても違法でない。
事件番号: 昭和38(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和39年6月9日 / 結論: 棄却
農地につき知事の許可なくして為された売買契約でも、その後該農地が適法に宅地化されたときは、そのときから当然効力を生ずると解すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)775 / 裁判年月日: 昭和38年11月12日 / 結論: 破棄自判
知事の許可を条件とする農地の売買契約において、これを転売したときには売主は直接転買のために右許可申請手続をする旨の合意をしても、右合意はその効力を生じない。