買受人が当初から宅地化する意図のもとに農地を買い受けたのち、間もなくこれを宅地化しても、右農地の所有権移転につき農地法三条の許可が不要となるものではない。
買受人が農地を宅地化した場合と農地法三条の適用
農地法3条
判旨
農地の売買契約後、買主側の働きかけにより無許可で宅地化されたとしても、農地法3条の許可が不要になることはなく、同許可が得られない限り所有権移転の効力は生じない。
問題の所在(論点)
農地売買契約の締結後、買主側の合意に基づき無許可で宅地造成が行われた場合、農地法3条の許可を要することなく所有権移転の効力が発生するか。
規範
農地法3条所定の許可は、農地の所有権移転における効力発生要件である。また、契約当時に農地であった土地が、買主の関与等により事後的に現況変更されたとしても、同条の許可を不要とする例外的な事情(買主の責に帰すべからざる事由による農地性の喪失等)には当たらない。
重要事実
上告人Aは農地である本件土地を買い受けた。その後、Aから売却依頼を受けたDが、Aの了解を得た上で、農地法4条の許可を受けることなくブルドーザーを用いて本件土地を宅地化した。この現況変更により、所有権移転登記のために必要な農地法3条の許可が不要となるか、あるいは許可なしに所有権移転の効力が生じるかが争われた。
事件番号: 昭和49(オ)398 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
時効による農地所有権の取得については、農地法三条の適用はない。
あてはめ
本件土地は売買契約当時、農地法の対象となる「農地」に該当していた。その後、買主Aの了解のもと、Dが農地法4条の許可を得ずに宅地化を強行している。このような買主側の主観的意図や不法な現況変更に基づく事後の状態変化は、農地法3条の制限を潜脱することを許容するものであり、「買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなった場合」には該当しない。したがって、依然として農地法3条の適用があり、同許可が効力発生要件となる。
結論
本件土地の所有権移転には農地法3条の許可が必要であり、現況が宅地化したことをもって許可なくして所有権が移転したと解することはできない。
実務上の射程
農地法3条の許可が「効力発生要件」であることを再確認した上で、現況主義の例外として、買主側の働きかけによる不法な現況変更では許可不要とはならないことを示した。答案上は、農地の二重譲売や登記請求の可否が問われる場面で、許可の要否を判断する際の基準(契約時の現況基準および不法変更の帰責性)として活用すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和42(オ)429 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
農地を目的とする売買契約締結後に、売主が目的物上に土盛りをし、その上に建物が建築され、そのため農地が恒久的に宅地となつた等買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなつた場合には、右売買契約は、知事の許可なし完全に効力を生ずると解するのが相当である。
事件番号: 昭和37(オ)291 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
甲乙間の農地訴有権移転の許可申請書に添付されている農地売買契約書表示の契約年月日において甲乙間に直接売買がなされた事実はなく、真実は、前示年月日以前に甲丙間に売買契約が成立していたところ、丙の右契約にもとづく権利を乙が譲り受け、甲乙間に当該農地の所有権移転がなされるに至つた場合にあつては、申請書添付書類に右のような真実…
事件番号: 昭和38(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和39年6月9日 / 結論: 棄却
農地につき知事の許可なくして為された売買契約でも、その後該農地が適法に宅地化されたときは、そのときから当然効力を生ずると解すべきである。