自作農創設特別措置法第三〇条に基づく未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合でも、その所有権の取得については、民法第一七七条が適用される。
自作農創設特別措置法第三〇条に基づく未墾地買収処分による国の所有権取得と民法第一七七条の適用
自作農創設特別措置法30条,民法177条
判旨
自作農創設特別措置法に基づく未墾地買収処分により国が所有権を取得した場合、国はその取得を登記しなければ第三者に対抗できず、民法177条が適用される。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づく買収処分という公法上の権利取得について、民法177条の適用があるか。
規範
いかなる原因による不動産物権変動であっても、これと抵触する物権変動が生ずる可能性があるときは、(1)特別の規定がある場合、または(2)公益上重大な障害を生ずるおそれがない限り、不動産物権公示の原則に照らし、民法177条が適用される。
重要事実
国は、自作農創設特別措置法に基づき本件土地(未墾地)の買収処分を行い、その所有権を取得した。しかし、買収令書における大字名の誤記等により、目的地の表示が不十分な状態であった。その後、国による買収処分の効力と、当該土地について生じた他の物権変動との優劣が争われ、国が登記なくして所有権取得を第三者に対抗できるかが問題となった。
事件番号: 昭和39(オ)82 / 裁判年月日: 昭和39年11月19日 / 結論: その他
一 自作農創設特別措置法第三条に基づく農地の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得については、民法第一七七条の適用がある。 二 自作農創設特別措置法第一一条は、農地の買収計画の樹立以降買収の効果発生までに権利関係の変動があつた場合において、その農地の所有者などの承継人に対してのみ農地の買収手続…
あてはめ
まず、買収処分により国が取得した所有権と抵触する物権変動が後になされる可能性は明らかである。次に、同法34条(11条準用)は買収手続中の承継人に効力を及ぼす規定にすぎず、取得後の民法177条の適用を排除する「特別の規定」ではない。さらに、法令の適正な運用がなされる限り、登記を要求しても「公益上重大な障害」が生じるとは認められない。したがって、本件物権変動には民法177条が適用される。
結論
国が買収処分によって取得した未墾地の所有権は、登記をしなければ第三者に対抗することができない。
実務上の射程
公法上の原因による権利取得であっても、対等な私人の権利を侵害する可能性がある以上、対抗要件の法理が及ぶことを示した。答案上は、農地買収に限らず「公法上の行為による物権変動と民法177条」が問われる場面で、公示の原則を基礎とした汎用的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)992 / 裁判年月日: 昭和41年9月29日 / 結論: その他
甲所有の山林につき国がいわゆる未墾地買収をした後、乙が甲から右山林を二重に譲り受けてその旨の所有権取得登記をした場合には、右取得登記以前に国から売渡を受けた丙が右山林の登記簿を閉鎖することなく、新たに所有権保存登記を了していたとしても、右保存登記は二重登記であつて効力がないから、結局、丙は右山林の所有権取得をもつて乙に…
事件番号: 昭和41(オ)840 / 裁判年月日: 昭和42年1月27日 / 結論: 棄却
一 農地法第四四条に基づく未墾地買収処分により国がその所有権を取得した場合でも、その所有権の取得については、民法第一七七条が適用される。 二 農地法第六〇条は、買収手続の過程で権利者が変動して買収手続がその効力を失うことなどによる手続の繁雑化を避けるため、買収の効果の発生までに権利関係の変動があつても、その承継人に対し…
事件番号: 昭和27(オ)129 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、国家の公権力的行使としての性質を有するため、民法177条の適用はなく、登記の有無にかかわらず実体上の権利関係に基づいて判断される。 第1 事案の概要:本件農地につき、昭和20年11月23日当時、訴外Dが共有持分権者として登記されていた。しかし、実体上の権…