甲乙が共同事業をはじめるにあたり、甲が前所有者から買い受けた土地を甲乙の共同所有にすることを合意した場合において、乙が前所有者から乙名義で単独所有権を取得した旨の所有権取得登記を経、乙がこの所有権取得登記の上に丙のため所有権移転請求権保全の仮登記および根抵当権設定登記を経ているときは、甲は、乙に対し、右単独所有権取得登記を甲乙両名の共同所有権の取得登記に、丙に対し、右仮登記および根抵当権設定登記の対象を乙の持分とする各更正登記手続を求めることができる。
単独所有権の取得登記を共同所有権の取得登記に更正登記手続を求めることができるとされた事例
不動産登記法63条
判旨
不動産が実体法上共有に属しているにもかかわらず、登記名義が一方の単独所有となっている場合、他方の共有者は実体関係に符合させるための更正登記手続を請求することができる。
問題の所在(論点)
不動産の共有者の一方が、実体法上は共有であるにもかかわらず単独所有名義となっている登記に対し、実体関係に符合させるための更正登記手続を請求できるか。また、その単独所有を前提とした第三者の登記の効力はどうなるか。
規範
不動産の物権変動は実体法上の権利関係と一致すべきであり、登記名義が実体法上の権利状態(共有)を正しく反映していない場合、真実の権利者は、登記名義人に対し、当該登記を実体関係に符合させるための登記手続(更正登記等)を請求し得る。
重要事実
被上告人(原告)は、前所有者Dから本件土地を買い受けた。その後、被上告人が上告人A1(被告)と古鉄売買業を共同経営するに際し、本件土地を含む営業用財産をA1との共有にすることに同意した。しかし、本件土地の登記はA1の単独所有名義となっており、さらにA1の単独所有を前提として上告人銀行(被告)のために抵当権等の登記がなされていた。
事件番号: 昭和37(オ)804 / 裁判年月日: 昭和38年11月15日 / 結論: 棄却
証拠を総合して事実を認定するに際し、証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用しなかつたことを判文上明示しなければならないものではない。
あてはめ
本件土地は、被上告人とA1との間の合意により、その同意の時以後、両者の共有に属するに至った。したがって、A1の単独所有とする登記は実体法上の権利関係に反する。被上告人は共有権に基づき、A1に対しては単独所有名義を共有名義に改める更正登記を、A1の単独所有を前提に登記を経た上告人銀行に対しては、当該実体に反する登記を是正するための手続を求めることができる。
結論
被上告人の請求は認められる。共有権に基づき、実体関係に符合させるための更正登記手続を求める請求は正当である。
実務上の射程
登記名義が実体と異なる場合の「真正な登記名義の回復」の一類型として、共有者が単独名義人に対し更正登記を求める際の根拠となる。答案上は、物権的請求権に基づく登記請求権の行使として構成する際の実務的帰結を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…