第1審で開始された勾留につき,被告人の控訴により訴訟記録が控訴裁判所に到達した後に第1審裁判所に対して勾留理由開示の請求をすることの許否(消極)
刑訴法82条,刑訴法97条
判旨
被告人の勾留中、第1審で実刑判決が言い渡され、控訴により訴訟記録が控訴裁判所に到達した後は、第1審裁判所に対して勾留理由開示の請求をすることは許されない。
問題の所在(論点)
第1審で実刑判決が言い渡され、控訴により訴訟記録が控訴裁判所に到達している場合において、第1審裁判所に対して勾留理由開示の請求をすることの可否。
規範
勾留理由開示の請求(憲法34条後段、刑訴法82条1項)は、勾留が開始された当該裁判所においてのみなすことを要する。もっとも、第1審での勾留継続中に実刑判決が言い渡され、控訴提起により訴訟記録が控訴裁判所に到達した後は、当該第1審裁判所はもはや事件を係属しておらず、開示請求の管轄を有しないと解される。
重要事実
被告人が第1審判決により実刑判決を言い渡され、勾留が継続された状態で控訴を提起した事案。本件請求の時点において、訴訟記録は既に控訴裁判所に到達していたが、請求者は第1審裁判所に対して勾留理由開示を求めた。
あてはめ
勾留理由開示請求は、憲法上の要請に基づき、現に身分を拘束している裁判所に対してその理由を問う手続である。本件では、被告人に対し第1審裁判所が実刑判決を言い渡した後、控訴によって訴訟記録が控訴裁判所に移っている。この段階では、事件の審理権および記録の管理権は控訴裁判所に移転しており、第1審裁判所は勾留の理由を判断・開示する権限を失っているといえる。したがって、第1審裁判所への請求は適法な手続とは認められない。
事件番号: 平成23(し)376 / 裁判年月日: 平成23年10月5日 / 結論: 棄却
第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合であっても,控訴審裁判所は,第1審裁判所の判決の内容,取り分け無罪とした理由及び関係証拠を検討した結果,なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,かつ,刑訴法345条の趣旨及び控訴審が事後審査審であることを考慮しても,勾留の理由及び必要性が認め…
結論
控訴により訴訟記録が控訴裁判所に到達した後は、第1審裁判所に対して勾留理由開示の請求をすることは許されない。
実務上の射程
勾留理由開示の管轄(請求先)に関する判断。訴訟記録の移動(控訴裁判所への到達)という形式的な事実により、第1審裁判所への請求権限が消滅する。実務上、控訴審段階での開示請求先を判断する際の基準となる。
事件番号: 昭和46(し)45 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由開示の請求を却下した裁判官の裁判に対しては、刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てが可能である。 第1 事案の概要:本件において、請求人は裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法であるか、すなわち、同裁判が「…
事件番号: 昭和31(し)61 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の請求を却下する決定で高裁がしたものに対しては、たとい判決後にしたものであつても、刑訴四二八条二項により、その高等裁判所に通常の抗告に代る異議の申立をすることができるのである。従つて原判決は同四三三条にいう「この法律により不服を申立てることができない決定」にあたらないから、これに対し同条所定の特別抗告を申立…
事件番号: 昭和51(し)123 / 裁判年月日: 昭和52年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟において抗告の利益が失われた場合には、当該抗告は不適法として棄却されるべきである。 第1 事案の概要:抗告人が提起した抗告に関し、本決定がなされるまでの間に、その抗告を継続する実益(利益)が失われる事態が生じた(具体的な事実関係については判決文からは不明)。 第2 問題の所在(論点):抗告…
事件番号: 令和7(し)328 / 裁判年月日: 令和7年5月21日 / 結論: その他
第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥される。