第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合であっても,控訴審裁判所は,第1審裁判所の判決の内容,取り分け無罪とした理由及び関係証拠を検討した結果,なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,かつ,刑訴法345条の趣旨及び控訴審が事後審査審であることを考慮しても,勾留の理由及び必要性が認められるときは,その審理の段階を問わず,被告人を勾留することができる。
第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合と控訴審における勾留
刑訴法60条1項,刑訴法345条
判旨
第1審の無罪判決により勾留状が失効した後であっても、控訴審裁判所は、第1審の無罪理由や関係証拠を検討した結果、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、勾留の理由・必要性が認められるときは、被告人を勾留することができる。
問題の所在(論点)
第1審の無罪判決により勾留状が失効した後(刑訴法345条)、控訴審裁判所が被告人を新たに勾留するための要件および判断枠組みが問題となる。
規範
控訴審において、第1審が無罪の言渡しをした場合であっても、裁判所は、①第1審判決の内容(特に無罪とした理由)及び関係証拠を検討した結果、なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、②刑事訴訟法345条の趣旨(無罪判決による勾留の失効)及び控訴審の事後審査的性格を考慮しても、なお勾留の理由及び必要性が認められるときは、審理の段階を問わず被告人を勾留し得る。
重要事実
第1審裁判所が被告人に対し犯罪の証明がないことを理由に無罪判決を言い渡した。これにより、刑事訴訟法345条に基づき勾留状は失効したが、その後の控訴審において、被告人が再び勾留されることとなった。被告人側は、第1審の無罪判決後に勾留の要件を欠く中でなされた控訴審での勾留は違法であるとして抗告した。
事件番号: 平成12(し)94 / 裁判年月日: 平成12年6月27日 / 結論: 棄却
第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審…
あてはめ
本件において、原決定は第1審の無罪判決の内容を十分に踏まえた上で検討を行っている。その上で、無罪判決の理由となった判断や証拠関係を精査しても、なお被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由が維持されていると評価できる。また、事後審査審としての制約を考慮しても、逃亡や罪証隠滅の恐れといった勾留の理由および必要性が認められると判断される。したがって、第1審の無罪判断という事実を前提としても、控訴審における勾留の要件は満たされているといえる。
結論
第1審の無罪判決後の控訴審における勾留は適法であり、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
第1審無罪後の控訴審における勾留要件を判示。勾留の理由(罪を犯したと疑うに足りる相当な理由)および必要性の判断において、第1審の無罪理由を「十分に踏まえる」べきことを要求する実務上の指針となる。
事件番号: 平成19(し)369 / 裁判年月日: 平成19年12月13日 / 結論: 棄却
第1審裁判所で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた被告人を控訴裁判所が勾留する場合,刑訴法60条1項にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断は,無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重になされなければならず,嫌疑の程度としては,第1審段階におけるものよりも強いものが要求される。 (補足意見がある…
事件番号: 平成11(し)159 / 裁判年月日: 平成11年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で無罪判決を受けた被告人であっても、控訴審判決前に勾留することは、国籍等の属性を理由とする差別でない限り、憲法14条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、第一審において「犯罪事実の証明がない」として無罪判決を受けた。しかし、控訴審において判決前に勾留された。これに対し弁護人は、被告…
事件番号: 昭和40(し)79 / 裁判年月日: 昭和41年10月19日 / 結論: 棄却
一 原裁判所は上訴提起後であつても、訴訟記録がまだ上訴裁判所に到達しない間は、被告人を勾留することができる 二 勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法第六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない
事件番号: 平成25(し)752 / 裁判年月日: 平成26年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の勾留中、第1審で実刑判決が言い渡され、控訴により訴訟記録が控訴裁判所に到達した後は、第1審裁判所に対して勾留理由開示の請求をすることは許されない。 第1 事案の概要:被告人が第1審判決により実刑判決を言い渡され、勾留が継続された状態で控訴を提起した事案。本件請求の時点において、訴訟記録は既…