第一審で無罪判決の言渡しを受けた外国人である被告人について控訴審が判決前に勾留したことは憲法14条1項に違反するという主張が前提を欠くとされた事例
憲法14条1項,刑訴法60条1項,刑訴法345条
判旨
第一審で無罪判決を受けた被告人であっても、控訴審判決前に勾留することは、国籍等の属性を理由とする差別でない限り、憲法14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
第一審で無罪判決を受けた被告人に対し、控訴審判決前に勾留を行うことが、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反するか。
規範
第一審において無罪判決の言渡しを受けた被告人であっても、控訴審における勾留の裁判が特定の属性(外国人であること等)を理由としてなされたものでない限り、憲法14条1項には違反しない。
重要事実
被告人は、第一審において「犯罪事実の証明がない」として無罪判決を受けた。しかし、控訴審において判決前に勾留された。これに対し弁護人は、被告人が外国人であることを理由とする勾留であり、憲法14条1項に違反すると主張して抗告した。
あてはめ
記録上、原決定が被告人が外国人であることを理由に勾留を是認した事実は認められない。したがって、特定の属性を理由とする不当な差別的取り扱いがあったという前提を欠いている。被告人が無罪判決を受けている事実があったとしても、それのみをもって直ちに勾留が違憲となるものではない。
事件番号: 平成12(し)94 / 裁判年月日: 平成12年6月27日 / 結論: 棄却
第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審…
結論
本件勾留は憲法14条1項に違反しない。したがって、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
無罪推定を受ける被告人の身体拘束の限界に関する事案。答案上は、一審無罪後の勾留の適法性や、外国人に対する差別的運用の存否が争点となる場面で、実質的な理由に基づく勾留であれば合憲であるとする根拠として引用し得る。
事件番号: 平成19(し)369 / 裁判年月日: 平成19年12月13日 / 結論: 棄却
第1審裁判所で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた被告人を控訴裁判所が勾留する場合,刑訴法60条1項にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断は,無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重になされなければならず,嫌疑の程度としては,第1審段階におけるものよりも強いものが要求される。 (補足意見がある…
事件番号: 平成23(し)376 / 裁判年月日: 平成23年10月5日 / 結論: 棄却
第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合であっても,控訴審裁判所は,第1審裁判所の判決の内容,取り分け無罪とした理由及び関係証拠を検討した結果,なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,かつ,刑訴法345条の趣旨及び控訴審が事後審査審であることを考慮しても,勾留の理由及び必要性が認め…
事件番号: 昭和40(し)79 / 裁判年月日: 昭和41年10月19日 / 結論: 棄却
一 原裁判所は上訴提起後であつても、訴訟記録がまだ上訴裁判所に到達しない間は、被告人を勾留することができる 二 勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法第六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない
事件番号: 昭和56(し)96 / 裁判年月日: 昭和56年9月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈の判断において申立人が外国人であることを実質的な理由として不利益に扱うことは、憲法14条に反し許されないが、本件原決定はそのような差別を行ったものとは認められない。 第1 事案の概要:保釈を申し立てた被告人が外国人であった事案において、原審が保釈を不許可としたことに対し、申立人が「外国人である…