1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は,民法所定の年5分である。 2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率 2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務が履行遅滞となる時期
(1,2につき)商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項(1につき)民法404条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)514条(2につき)民法412条
判旨
取締役の会社に対する任務懈怠責任に基づく損害賠償債務の遅延損害金利率は、商事法定利率ではなく民法所定の年5分である。また、当該債務は期限の定めのない債務であり、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
問題の所在(論点)
取締役が会社に対して負う任務懈怠に基づく損害賠償債務について、(1)遅延損害金の利率として商事法定利率(年6分)が適用されるか、及び(2)遅滞に陥る時期(起算日)はいつか。
規範
商法266条1項5号(現会社法423条1項)に基づく取締役の損害賠償責任は、任務懈怠により生ずる債務不履行責任であるが、法により内容が加重された特殊な責任であって、商行為たる委任契約上の債務が単に態様を変じたものとはいえない。したがって、商行為によって生じた債務(商法514条)又はこれに準ずるものとは解せず、利率は民法所定の年5分(当時)となる。また、同債務は期限の定めのない債務として、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る(民法412条3項)。
重要事実
株式会社Aの株主である被上告人が、同社の取締役であった上告人らに対し、忠実義務及び善管注意義務違反(任務懈怠)により会社が損害を被ったとして、株主代表訴訟を提起した。原審は、本件が会社関係の商事事件であることを理由に、損害賠償金に対する遅延損害金の利率を商事法定利率の年6分とし、起算日を訴状送達の日より前の特定の日と認定したため、上告人側がこれを不服として上告した。
あてはめ
(1)取締役の損害賠償責任は、単なる委任契約上の債務不履行ではなく、法が認めた特殊な責任である。よって、商行為によって生じた債務には当たらないため、民事法定利率の年5分を適用すべきである。(2)当該債務は確定期限の定めがないため、債務者が履行の請求を受けた時に初めて遅滞の責任を負う。原審が履行請求の事実を認定せずに訴状送達日前の日を起算日としたのは、法令の解釈を誤っている。
結論
遅延損害金の利率は年5分であり、起算日は履行の請求を受けた時である。これと異なる原審の判断を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
会社法423条1項に基づく役員等の責任追及において、遅延損害金の利率を確定させる際の重要な指針となる。現在は民法改正により法定利率が変動制(当初3%)となっているが、商事法定利率(廃止済み)ではなく民事法定利率が適用されるという判断枠組み自体は、特則の有無を検討する際の標準的な思考方法として活用できる。
事件番号: 昭和59(オ)15 / 裁判年月日: 平成元年9月21日 / 結論: その他
一 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務は、履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。 二 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の遅延損害金の利率は、年五分である。
事件番号: 平成30(受)44 / 裁判年月日: 平成30年12月14日 / 結論: 棄却
詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。