商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法167条1項により10年と解すべきである。
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間
民法167条1項,商法522条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法423条1項,会社法430条
判旨
取締役の会社に対する損害賠償責任(旧商法266条1項5号)は、法令により内容が加重された特殊な債務不履行責任であり、その消滅時効期間は、商法522条の5年ではなく、民法167条1項により10年と解すべきである。
問題の所在(論点)
旧商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償請求権の消滅時効期間について、商法522条(5年)が適用されるか、それとも民法167条1項(10年)が適用されるか。
規範
取締役の任務懈怠による損害賠償責任は、法によりその内容が加重された特殊な責任であって、商行為たる委任契約上の債務が単に態様を変じたものとはいえない。また、取締役の任務懈怠は外部から判明しにくく、商事取引における迅速決済の要請も妥当しない。したがって、商法522条の適用・類推適用の根拠はなく、民法上の一般時効が適用される。
重要事実
銀行の取締役であった上告人が、融資に際して忠実義務および善管注意義務に違反した(任務懈怠)として、整理回収機構(被上告人)から旧商法266条1項5号に基づき損害賠償を請求された。上告人は、当該損害賠償請求権は商事消滅時効(5年)により消滅したと主張して争った。
あてはめ
取締役の義務は法令によって内容が規定される側面を有し、旧商法266条は責任の明確化・厳格化を図る趣旨で連帯責任を課すなど、責任が加重されている。このような特殊な責任には、商行為から生ずる債務に関する迅速決済の要請(商法522条)は及ばない。ゆえに、民法の原則に従い10年の時効期間を認めるべきである。
結論
商法266条1項5号(現会社法423条1項)に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は10年である(※現行法下では会社法430条・民法改正等の影響に留意が必要)。
実務上の射程
本判決は旧商法下の判断であるが、会社法423条1項に基づく役員等の責任の時効期間についても、特則(会社法432条)がない限り、民法の一般原則(知った時から5年・権利行使可能時から10年)が適用されるという実務上の基礎となる考え方を示している。
事件番号: 平成24(受)1600 / 裁判年月日: 平成26年1月30日 / 結論: その他
1 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づき取締役が会社に対して支払う損害賠償金に付すべき遅延損害金の利率は,民法所定の年5分である。 2 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
事件番号: 平成10(オ)920 / 裁判年月日: 平成12年10月20日 / 結論: 棄却
株式会社の取締役が商法二六五条一項の取引によって会社に損害を被らせた場合、当該取締役は、同法二六六条一項四号の責任を負う外、右取引を行うにつき故意又は過失により同法二五四条三項(民法六四四条)、商法二五四条ノ三に定める義務に違反したときには、同法二六六条一項五号の責任をも負う。