一 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務は、履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。 二 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の遅延損害金の利率は、年五分である。
一 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の履行遅滞となる時期 二 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の遅延損害金の利率
商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3,民法404条,民法412条
判旨
取締役の第三者に対する責任(会社法429条1項)は、不法行為責任ではなく、会社法の規定により特に認められた責任である。そのため、その遅延損害金の利率は特段の事情がない限り民事法定利率が適用され、履行の請求を受けた時から遅滞に陥る。
問題の所在(論点)
会社法429条1項(旧商法266条ノ3第1項)に基づく取締役の第三者に対する損害賠償債務の性質は何か。また、その遅延損害金の発生時期および利率はどのように解すべきか。
規範
1. 取締役の第三者に対する損害賠償債務は、法が取締役の責任を加重するため特に認めた責任であって、不法行為に基づく損害賠償債務ではない。 2. 右債務は商行為によって生じた債務ともいえないため、その遅延損害金の利率は民法所定の法定利率による。 3. 右債務は期限の定めのない債務として、履行の請求を受けた時から遅滞に陥る。
重要事実
D商事の代表取締役または取締役である上告人らが、会社法上の職務懈怠により被上告人(第三者)に対し、合計6762万5295円の手形金相当額の損害を負わせた事案。原審は、不法行為と同様の性質を認め、支払期日等からの遅延損害金の発生、および商事法定利率(年6分)の適用を認容したため、上告人らがこれを争った。
あてはめ
本件損害賠償債務は法定の特別責任であり、不法行為ではないから、不法行為時(損害発生時)から当然に遅滞に陥るものではない。したがって、履行の請求である本件訴状送達の日の翌日から遅滞に陥ると解すべきである。また、本件債務は商行為から生じたものではないため、商事利率ではなく民事法定利率(年5分)が適用される。原審が一部の手形について支払期日からの遅滞を認め、かつ年6分の利率を適用した点は、法令の解釈適用を誤ったものである。
結論
本件損害賠償債務の遅延損害金は、訴状送達の日の翌日から発生し、その利率は民事法定利率(年5分)に限られる。
実務上の射程
会社法429条1項の責任の法的性質が「法定の特別責任」であることを論証する際に必須の判例である。答案上、遅延損害金の起算点(履行請求時)や利率(民事法定利率)を特定する際の根拠として用いる。不法行為(709条)との性質上の違いを強調する文脈で有効である。
事件番号: 昭和50(オ)372 / 裁判年月日: 昭和51年6月3日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が、主要な販売取引先の経営状態の悪化を知りながら、右取引先の事業に関する調査を怠り、漫然取引を続け、右取引先から受け取る手形の割引によつて支払が可能であると軽信して、他に支払手段を講ずることなく仕入取引先から原材料を仕入れたところ、右販売取引先の倒産により仕入代金の支払不能に陥つた場合には、右取締役…