競売申立の登記後に不動産を賃借した者は、右賃借権をもつて右不動産の競落人に対抗することができない。
競売申立登記後に成立した不動産賃借権の対抗力
民訴法650条,民訴法651条,競売法25条1項,競売法26条
判旨
会社の代表取締役が、会社による不動産の不法占有を継続させた場合、当該不法占有は代表取締役としての職務執行にあたり、悪意又は重大な過失があるときは、会社法429条1項(旧商法266条の3第1項)に基づき第三者に対する損害賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
競売による買受人に対抗できない賃借権に基づき、会社が建物の占有を継続した場合において、代表取締役は会社法429条1項(旧商法266条の3第1項)に基づき、買受人に対して直接の損害賠償責任を負うか。
規範
取締役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う(会社法429条1項)。本規定の趣旨は、取締役の地位の重要性に鑑み、第三者の保護を図るため、任務懈怠と損害との間に相当因果関係がある限り、直接・間接の損害を問わず賠償責任を課した法定の責任である。会社による不動産の不法占有が継続されている場合、これを是正すべき職務上の義務に違反したときは、本条の任務懈怠にあたる。
重要事実
D工業株式会社の代表取締役である上告人は、本件建物について競売手続が開始され、競売申立登記がなされた後に賃借権を取得したと主張した。しかし、当該賃借権は競落人である被上告人らに対抗できないものであった。それにもかかわらず、上告人はD社を代表して本件建物の占有を継続し、被上告人らへの引き渡しを拒んだ。被上告人らは、D社の不法占有により建物の使用利益相当額の損害を被ったとして、上告人に対し旧商法266条の3第1項(現会社法429条1項)に基づく損害賠償を求めた。
あてはめ
D社が主張する賃借権は競売申立登記後に成立したものであり、買受人である被上告人らに対抗できないことは明らかである。したがって、D社による建物の占有は不法占有にあたる。上告人はD社の代表取締役として、会社の業務を執行し不法占有状態を解消すべき立場にありながら、あえて占有を継続させた。この職務執行上の行為には少なくとも重大な過失(または悪意)が認められ、被上告人らが建物の所有権を行使できず被った賃料相当額の損害との間には相当因果関係が認められる。
結論
上告人は、会社法429条1項に基づき、D社の不法占有によって被上告人が被った損害を賠償する義務を負う。
実務上の射程
会社が不法行為(本件では不法占有)を行っている際、その不法状態を放置・継続させた代表取締役の職務執行について、第三者に対する直接責任を認める際の有力な根拠となる。答案上は、取締役の任務懈怠(423条1項)を前提としつつ、第三者の損害との因果関係を肯定する論理として活用できる。なお、不法占有という事態の継続について取締役の帰責性を問う点に特徴がある。
事件番号: 昭和45(オ)399 / 裁判年月日: 昭和47年9月21日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が、会社において代金を支払う資力がないものである事情を知りながら、会社の被用者をして会社のため第三者から商品を買い受けさせ、右第三者にその代金相当額の損害を与えた場合には、右代表取締役は、右第三者に対し、不法行為による損害賠償責任を負うものと解すべきである。 (意見がある)